退職金制度は長らく多くの給与生活者の老後生活を支えてきた制度だ。老後が今ほど長いと意識されなかった時代には退職金は年金と並んで定年退職者の主要な生活資金であった。
しかし、退職金制度も年金と同様に若い世代が増えていくことで可能なシステムであると言える。高齢化社会では定年退職者の数が増えるので支払う退職金の資金繰りが厳しくなる企業も増えるだろう。こうした人口構造を背景に退職金制度の見直しや制度自体の廃止、退職金制度じたいを作らないという企業も増えてきているという。
最近の企業の退職金制度に関し旅行関連業のエアトリが10代から70代の男女1087名を対象に調査を実施し、2日にその集計結果を公表している。
企業の退職金制度の設置率についてみると、現在就業中もしくは退職済みの者に「退職金制度があるか(または、あったか)」と尋ねたところ「はい」と回答した者は73.7%で、7割程度の企業で退職金制度が設置されていると推測できる。
「ある」と答えた者の業種割合を見ると「メーカー」が22.6%、「公的機関」が12.2%、「不動産・建設・設備」9.1%、「IT・通信・インターネット」6.7%、「サービス・レジャー」6.5%、「運輸・交通・物流・倉庫」5.5%、「金融・保険」5.2%、「商社」5.0%の順となっている。割合の低いものを見ると「コンサルティング」0.8%、「マスコミ・広告・デザイン」が1.7%となっている。
これはあくまでも回答者の所属する業種で企業の実施率ではないが、全体の印象としてはやはり大手の多い業種で多く、フリーランスの多い業種では少なくなっているのではないか。
退職金の額について尋ねた結果では、「2000万円~3000万円未満」が21.4%で最も多く、次いで「1000万円から2000万円未満」が17.9%、「3000万円~5000万円未満」で8.7%という順になっている。3000万円未満で67.1%となっており7割近くが3000万円未満である。ちなみに「わからない」が21.1%おり、これを除いた比率で見ると85%が3000万円未満となる。
退職金制度があると答えた者に「退職金で何をしたいか」と複数回答で尋ねたところ、「海外旅行」が53.0%と最も多く、次いで「貯蓄」の52.2%となり、この2つが群を抜いて多くなっている。「貯蓄」が多いという結果はやはり退職金は生活資金として重要な収入源と見なされているということだろうか。(編集担当:久保田雄城)