かつては働く女性は結婚して「寿退社」で家庭に入るというのが一般的な形であったが、そうした女性の働き方に大きな変化が生じている。2000年代に入ってからは共働き世帯が、夫が働いて妻は専業主婦という世帯を逆転し、ここ5年ほどはその差が急激に広がっているのだ。結婚後も共働きをキープすることによって生涯賃金が高くなり、車や家の購入といったライフイベントを実現しやすくなっていく。
結婚後も夫婦ともに働き続けるもっとも大きなメリットは、やはり生涯賃金の高さだろう。男性が大卒で65歳まで働いたと仮定すれば生涯賃金は平均およそ3億円と言われる。働き方改革によって就業時間が少なくなることが予想される中、この3億円という生涯賃金を大幅に引き上げることは難しいだろう。では共働き世帯はどうかというと、もし妻も正社員で働き続けた場合には世帯としての生涯賃金は4億円もしくは5億円程度になること予想される。家や車を購入する、子どもの学費を貯める、老後のために貯蓄をするなどのライフイベントを実現するためにどちらが有利かは言うまでもないだろう。
こうした点を考慮すると、安易に寿退社や子育て退社を選ぶのが得策でないことがわかる。一度正社員として働くことをやめてしまうと、いかに人材不足が深刻化しているとはいえ再度正社員として再就職するのは難しいだろう。夫婦そろって働くことを決めているのであれば、結婚や出産によって共働きが途切れてしまわないように注意が必要だ。例えば出産や子育てのために退社するよりも産休や育休を積極的に取得したほうが良い。それと共に重要なのが夫の側の協力だ。無理なく共働きを続けていくために、男性も積極的に家事や育児に携わることが求められている。
かつては専業主婦として家庭に入ることが女性の憧れであったが、現在では経済的にも自立している女性への憧れが強くなっている。女性が結婚・出産後も共働きを維持しやすいように、結婚後の男性の協力や企業の配慮などが求められているのだ。(編集担当:久保田雄城)