水道施設を自治体が所有したまま、水道事業の運営権を民間企業に売却する『コンセッション方式』を入れる水道法改正案が5日、参院本会議で自民、公明、維新の会などの賛成多数で可決。衆院に送られた。今国会で法案は成立の見込みだが、日常の「生活水」が利潤追求の対象にさらされることになる。
社会民主党の吉川はじめ幹事長は「水の運営権を、外資を含む企業に売り渡すこの案は公共の福祉を脅かす事態となりかねない」と指摘。「十分な審議もないまま、今国会で押し通そうとする政府・与党に抗議する」との談話を発表した。
この中で、吉川幹事長は「コンセッション方式」導入の問題について(1)経営方針や予算立案、執行、人事、メンテナンスの規模等運営に関わるすべての権限を民間事業者が持つことになる(2)民間企業の本質は利潤追求であり、料金の値上げや現場労働者の人件費カット、メンテナンス投資の抑制につながることが懸念される(3)株主への配当や役員報酬、法人税なども料金に含まれ、水道事業への十分な投資が行われない可能性がある、などを挙げた。
また「利潤が出なければ撤退をするリスク、倒産のリスクもある。必要な情報が『企業秘密』として開示されなくなることも危惧される。事業運営をモニタリングする人材や技術力の確保も心配だ。さらに運営権は投資の対象となり、抵当権も設定することができるが、金融機関や投資ファンドが抵当権を行使した場合、混乱に陥ることも危惧される」と指摘する。
また、民営化による水道料金の値上げ事例では、吉川幹事長によると「フィリピン・マニラ市は水道料金が4~5倍に跳ね上がり、ボリビア・コチャバンバ市では雨水まで有料化され暴動が起き、フランス・パリ市では料金高騰に加え不透明な赤字経営が問題となった」としている。そのうえで「多くの自治体で再公営化が相次いでおり、日本のコンセッション導入は周回遅れ」としている。(編集担当:森高龍二)