宅配ボックスの中身が盗まれる事件が相次いでいると朝日新聞が伝えたのは2018年の末の事だ。17年から18年にかけて埼玉県川口市などで頻発した事件だと言う。
ネット通販による宅配便利用の増加などが原因となり、近年では社会問題になるほど配送スタッフの人手不足が叫ばれている。17年3月12日には準中型免許が新設され、免許制度を改正してまで運送業界の人手不足を解消するための試みがなされた。しかし依然として運送における厳しい状況は変わらず、荷物を運ぶ配達員を一際悩ませているのが受取人の不在である。
宅配ボックスはこの受取人不在問題を解決するために一役買っている。個人で購入できるタイプのものからマンションに設置できるものまでそのタイプは様々であるが、名宛人が不在であっても宅配ボックスの中に荷物を入れれば配送スタッフはその場で仕事を完了できる。不在票をポストに入れて再配達依頼が来てから再び荷物を届けに行く事は単なる二度手間でしかない。それが一件や二件の話で済むならまだ良いだろう。しかしいくつもの配送先で同様の事態が頻発しため配送スタッフを苦しめており、その状況を打開するためにも宅配ボックスの利用が徐々に広がってきている。
宅配ボックスを狙った盗難はそんな中で起こった。17年11月には埼玉県川口市のマンションで、18年5月には東京都足立区の集合住宅で宅配ボックスが狙われ、この事件の犯人である男には窃盗罪による執行猶予付きの懲役判決が出された。この宅配ボックスは配送スタッフが不在票に暗証番号を書いてポストに入れておき、暗証番号を入力する事によって開錠するシステムだった。そしてその不在票に目をつけたのがこの事件の犯人の男だ。新聞紙を丸めた棒にテープを巻いてポストに差し入れ、不在票をテープの粘着面にくっつけることによって不在票を取り出す手口である。
日常生活の中に便利な物やシステムなどが生み出されると、それに伴って新たな犯罪の手口が出て来るケースも少なくない。宅配ボックスもその一つであり、安全に商品を手にするための対策と方法が求められている。(編集担当:久保田雄城)