トヨタとパナソニックは共同で、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)用など電動車用角形電池事業を行なう新合弁会社を2020年末までに設立する事業統合契約ならびに合弁契約を締結したと発表した。
パナソニックは米EVメーカーのテスラ向けバッテリーを除き車載用電池のすべての工場を新会社に移管する。電池はEVやPHVなどの性能を決定する中核技術であり、これまで日本企業がリードしてきた。しかし、コストと規模で中国や韓国勢が追い上げてきた。日本を代表する自動車メーカーと電機メーカーが手を結び、世界のバッテリー開発競争をリードする体制を目指す。
トヨタはハイブリッド車(HV)で世界的な省燃費競争をリードしてきたが、EVの商品化では出遅れた。30年にHVを含めた電動車生産を現在3倍以上、550万台に増やす計画を発表している。大容量電池開発と安全性、コストダウンが最大の課題で、パナソニックとの連携で乗り切る。
国策としてEVシフトを進める中国で、電池製造分野でも中国寧徳時代新能源科技(CATL)が、2017年にパナソニックを抜いて世界首位に躍り出た現状を睨んだ合弁会社ともいえる。
パナソニックはEV用電池で提携する米テスラと共同体制を組んできたが、テスラ社の上海工場建設を巡って、昨年11月にテスラ社のイーロン・マスクCEOが「パナソニックを含めた複数社から現地で調達する可能性が高い」とツイッターに投稿した。これも、今回の提携を加速させた要因だろう。
新会社の出資比率はトヨタが51%、パナソニックが49%。パナソニックは日本と米国、中国に電池工場を持つ。テスラ向けの工場を除き、兵庫県や中国・大連に持つ5カ所の車載電池の生産設備を新会社に移管する。
新会社は、2020年からハイブリッドカー(HV)の駆動用電池の約50倍といわれる大容量EV向電池の生産を本格化させる。トヨタ・グループのダイハツやEV開発で提携するマツダやSUBARUなどにも供給する計画だ。国内ではパナソニックがHV電池を供給しているホンダなどにも採用を呼びかけ、生産規模を拡大しコストを下げる方針だ。
新会社は。巨額の投資や技術力が必要とされる次世代電池本命、全固体電池などの開発を進め、世界競争を勝ち抜く体制の構築を急ぐ。パナソニックはトヨタとの協業で投資負担を分散すると同時に、供給先を広げられるメリットがある。電池の再利用や希少金属(レアメタル)など資源の確保もしやすくなるとしている。
トヨタの寺師副社長は、「パナソニックとともに電動車のコア技術のひとつである電池の競争力を磨き、トヨタのみならず広く自動車メーカーの電動車普及に貢献していくことで、地球温暖化や環境・エネルギー問題の解決に寄与していきたい。また、より良い電動車をお届けすることを目指して一昨年公表した、2030年に、グローバル年間販売台数における電動車を550万台以上などとした『電動車普及に向けたチャレンジ』の達成に向けても、この新会社への期待は大きい」と語った。(編集担当:吉田恒)