自動車の未来を変えるワイヤレス給電。ロームは充電+αのソリューションを開発

2019年01月20日 11:11

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ロームは1月15日、ST マイクロエレクトロニクスのNFC リーダライタIC と8bit マイコンを採用した車載向けワイヤレス給電ソリューションの開発を発表。Qi 規格とNFC を組み合わせることで車載アプリケーションの技術革新に貢献する

 自動車を取り巻く先端技術の中で自動運転とともに注目されているのがワイヤレス給電だ。矢野経済研究所が昨年8月にまとめたレポートによると、ワイヤレス給電の世界市場規模は2023年に3590億円にまで成長すると予測されている。2017年の1223億1000万円と比較すると、実に3倍近くもの急成長だ。

 ひとくちに「自動車向けのワイヤレス給電技術」といっても、大きく分けて2つある。

一つは電気自動車(EV)向けのワイヤレス給電だ。現在、EV車への充電はプラグを用いた有線方式が一般的だが、これが微妙に面倒くさい。EV車の普及を妨げている一つの原因にもなっているだろう。そこで今、「駐車するだけ」で充電できるワイヤレス充電システムの開発が待望されているのだ。

 日本では、ダイヘンが2017年11月にEV向けワイヤレス充電システム「D-Broad EV」を国内で初めて商品化したのを皮切りに、重工業メーカー大手のIHIや東芝、ニチコンなどが、こぞって開発を進めている。

 そして、もう一つが車内のワイヤレス給電システムだ。こちらは自動車そのものへの充電ではなく、主にスマートフォンなどモバイル機器向けの車載充電設備。ワイヤレス給電といえば、一般的には自動車向けよりもモバイル機器向けのイメージが強いのではないだろうか。ワイヤレス給電は手軽で安全、防水性や防塵性などにも優れていることから、家庭内だけでなく、ホテルや空港、カフェなどの公共施設やインフラへの導入も加速している。

 それに連れて、これまで過渡期のために林立していた給電規格のシェア獲得競争も収束に向かいつつあるようだ。激戦を制して主流となりつつあるのは、スマートフォンで広く採用され、Appleも参加したことで一躍注目を集めた、WPC(Wireless Power Consortium)のQi規格。一般社会への認知も順調で、「Qi」は今やモバイル向けのワイヤレス給電の代名詞にもなりつつある。

 車載向けも同様で、アウディやBMW、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、フォルクスワーゲンなど、錚々たる自動車メーカーが名を連ねる欧州の自動車規格団体 CE4Aが自動車内でのワイヤレス給電規格にQiを選定したことで、今後、世界中の自動車に搭載されるワイヤレス給電のほとんどがQi規格となることは間違いなさそうだ。

 そんな中、WPCのレギュラーメンバーとして Qi規格の策定の段階から協議に参加し、積極的な製品開発を行っているロームが1月15日、非接触通信のNFC(Near Field Communication)に対応した車載向けワイヤレス給電ソリューションの開発を発表し、早くも話題になっている。

 本製品を搭載したワイヤレス充電台にスマホを置けば、Qi規格で充電が行えるだけでなく、NFCがその機器認証によって、車内のBluetooth/Wi-Fi ネットワークへのペアリングを瞬時に行う。これにより、車内インフォテイメント機器との画面共有やナビシステムの連携などが、飛躍的にスムーズに行えるようになるのだ。 将来的にはこのシステムを応用し、従来のキーや専用カードの代わりにスマホを用いるシェアードカーシステムの実現なども目指している。普及すれば、これまでになかった革新的な車載アプリケーションの登場も期待できそうだ。(編集担当:藤原伊織)