今や年始の恒例行事となった米国最大のコンシューマーエレクトロニクス関連の展示会「CES 2019」が、今年も1月8日から11日までの4日間にわたってラスベガスで開催され、盛況のうちに幕を下ろした。
展示面積約25万平方メートルで繰り広げられる世界最大級の家電見本市。とはいえ、展示品は家電だけにとどまらない。自動車技術やロボティクス、教育、ヘルスケアなど、様々な業種・業態から4500社を超える企業が出展し、自社の誇る最先端のエレクトロニクス技術を披露する。回を重ねるごとに規模も注目度も増しており、新年のお祝いムードも相まって、ここで大きな発表をする企業も年々増えてきた。
例えば、トヨタグループの自動車部品メーカーであるアイシン精機は、二度目のCES出展となる今回、同グループの描く未来と、それを実現する技術開発として、体験型コンセプトカー「i-mobility TYPE-C」を初公開した。話題の自動運転を軸に「オーナーカー」と「リムジンカー」を左右両面にイメージした同車は、今後ますます多様化するであろうモビリティ社会を予感させるものだった。
また、ホンダは、人や障害物を避けて最適ルートで目的地に移動するAI搭載の最新ロボット「Honda P.A.T.H. Bot(パスボット)」や、電気自動車、プラグインハイブリッド車などをパッドの上に駐車するだけで、ワイヤレスで充放電ができる「Wireless Vehicle-to-Grid(ワイヤレス ビークル トゥ グリッド)」システムなどの具体的な最新技術を公開するとともに、これらの開発の促進・事業化を目的としたオープンイノベーションの呼びかけも行っている。
そして今回注目を集めたのが、日本の住宅メーカー・積水ハウスだ。CES初出展となる今回、同社が発表したのはIoTの技術を活用した「プラットフォームハウス構想」だ。CESのプレスカンファレンスに登壇した積水ハウスの代表取締役社長 仲井嘉浩氏は、家を幸せのプラットフォームにする新プロジェクトと紹介しており、今後の住まいの事業モデルを大きく変えるものと語った。
「プラットフォームハウス構想」は、住まい手のデータを基にサービスを開発し、「健康」「つながり」「学び」という無形資産を生み出し続ける家で、人生100年時代の幸せをアシストするという構想で、具体的なサービスとしては、住宅に設置したセンサーなどを通じ、住民の心拍数などの生体データ、温度や湿度の住環境データなどを検知し、住民の健康状態をモニタリングする。平時は、高血圧など生活習慣病の経過観察や、睡眠や食事などの状態を観察し、生活習慣等のアドバイスを行うほか、脳卒中や心筋梗塞などの病気が突然発症したような際には、センサーなどが異常を検知して緊急連絡を入れるなど「早期発見」につなげる。
今月から実証実験を開始し、同社が創業60周年を迎える2020年春、まずは新築戸建て住宅からの販売を開始する予定だという。NEC、NTTコムウェア、慶応大理工学部、慶応大病院、コニカミノルタ、産業技術総合研究所、日立製作所の7団体も参加。また、オープンイノベーションで病院での臨床研究や実際の住宅での実験も重ねていく。
積水ハウスといえば、住宅のトップメーカーであるとともに、大阪を代表する企業の一つ。奇しくも、2025年に地元で開催予定の大阪万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を一足早く体現するプロジェクトになりそうだ。(編集担当:藤原伊織)