自衛隊員募集について「地方公共団体は自衛官の募集事務の一部を行うこととされている」(自衛隊法97条1項)「防衛大臣は募集に必要な報告又は資料の提出を求めることができる」(自衛隊法施行令120条)との規定を根拠に、住民基本台帳から18歳、22歳の住民の個人情報(氏名、住所、性別、生年月日)を紙媒体や電子媒体で防衛省・自衛隊地方協力本部に提出するよう「強く協力を求める」姿勢が政府・与党の自民党に顕著になっている。
しかし、自治体側の「義務」については法令上の規定がない。現況は自治体の判断で行われている状況で、閲覧を超え、紙や電子媒体で個人情報を提供することには問題を指摘する専門家もいる。
また防衛白書「第4章、国民と防衛省・自衛隊、自衛隊の職員の募集・採用」紹介の項目では「地方公共団体は『自衛官の募集事務の一部を行うこととされており(注釈3)』、防衛省は、そのための経費を地方公共団体に配分している」と「自衛官の募集事務の一部」について注釈で説明しているが、「住民基本台帳からの個人情報」提供について触れていない。
「自衛官募集事務の一部」について、防衛白書は「募集期間の告示、応募資格の調査、志願票の処理と受験票の交付、試験期日・試験場の告示、試験に必要な場所と施設の提供、および広報宣伝など」と自衛隊法施行令の114条から119条までの内容を紹介。120条について内容(解釈)を紹介していない。
「隊員の募集」という項目を設けながら、個人情報にかかわる案件にも関わらず提出するよう求めていることに一切触れていないことにこそ問題があるのではないか。警察官や消防、国家公務員・地方公務員募集などにそうしたことは一切していないはずだが、自衛隊募集になぜ本人の同意なく個人情報を紙媒体や電子媒体で提出させることができるのか、突っ込んだ議論が求められる。(編集担当:森高龍二)