隊員募集に個人情報提供の在り方、国会で議論を

2019年02月17日 10:04

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防衛省が自衛隊員募集のために自治体に対し、18歳や22歳の個人情報(住民、氏名、住所、性別、生年月日)を印刷した紙媒体や電子媒体での提供協力を求めている

 防衛省が自衛隊員募集のために自治体に対し、18歳や22歳の個人情報(住民、氏名、住所、性別、生年月日)を印刷した紙媒体や電子媒体での提供協力を求めている問題で、岩屋毅防衛大臣は15日の記者会見で、記者団から名簿提出は自治体の事務として『義務であると考えているか』と問われ「法定受託事務というのがあり、法令に従って、当然に御協力いただけるという前提で依頼させていただいている」と答えたが『義務』とは言えなかった。

 自衛隊法、自衛隊施行令に基づき、防衛大臣は自治体に対し「資料を求めることができる」となっているが、求められた場合に自治体はこれに答えなければならないとする『義務』規定はない。言い換えれば「応じなければならない義務はない」。本人の同意を得ずに個人情報を提供するのかどうか、現行法令では自治体の判断によっている。強制はできない。

 専門家の中には、法令にある「資料」に「住民基本台帳の個人情報(氏名や住所、性別、生年月日)は含まれないと解釈すべき」「個人情報を提供する法的根拠がない」との指摘もある。閲覧はともかく、自治体が個人情報を紙媒体や電子媒体で提供することには違法性の疑いさえ提起する声もある。

 今国会で「自治体が協力できない理由として、法令で定められていないため、個人情報の観点から協力したくてもできないのではないか」と提起した議員もいたが、そもそも、個人情報の扱いについて慎重な議論をする必要がある。

国民の中には、これまで住民基本台帳から自身や18歳になる家族の個人情報が自衛隊員募集のために防衛省(具体的には各地方協力本部)に提供されていたこと自体、知らなかったという人も多いようだ。

 自衛隊に入りたいという志望者がいる一方、自衛隊から勧誘資料が送付されてくるのは嫌だという人もいるだろう。法的根拠がない以上、そこはどうあるべきか、国会で議論してしかるべきではないのか。

 このような中で、自民党はあろうことか所属国会議員に自身の選挙区の自治体が協力しているか状況を確認するよう文書で指示した。地方交付税に頼りきりの自治体にとって、与党の国会議員からこうしたことを尋ねられれば、圧力以外の何物でもない。個人情報を本人の同意なく提供することは難しいと個人情報保護を尊重する首長が個人情報は出していないと答えれば「はいそうですか」と議員が引き下がるとはとても思えない。協力を求めるのは明らかだ。

 住民基本台帳から個人情報を防衛省に提供する義務(法的根拠)はない。まして圧力をかけて進めるのは言語道断だ。

 岩屋防衛大臣は「できれば紙媒体や電子媒体という形で協力していただきたいと思っている」と終始、『協力』という言葉を繰り返した。自治体に個人情報提供の義務がないこと、法令に根拠がないことを裏付けている。

 加えて防衛省は、寄せられた個人情報を毎年毎年蓄積しているのか、隊員募集のために必要だとして資料提供を求めている以上、情報漏洩の危険や目的外使用の危険をなくすため、隊員募集のための資料としての価値がなくなった時点で消去、紙なら焼却処分することが必要と思われるが、現在、どのような管理をしているのか、この点も国会で明らかにしてほしい。(編集担当:森高龍二)