安倍晋三総理は13日の衆院予算委員会で、自衛隊員募集に際し「6割以上の自治体は法令に基づく防衛大臣の求めに応じず、資料を提出しない」と募集に対する協力がないとした。
自衛隊法や自衛隊法施行令の規定は、防衛大臣は資料の提供を求めることができるとするものの「自治体側に提供の義務を法的に生じさせるものではない」。
自衛隊員募集のための情報として住民の個人情報を提供するかどうかは自治体の判断で対応しても問題のない話だ。
しかし国の要請に答え、自治体の4割は18歳になる住民の氏名、住所、性別、生年月日という個人情報を記載した紙や電子データを自衛隊の地方協力本部に提供し、協力しないという安倍総理がいう自治体も、紙や電子データでの提供こそしないが、閲覧させるなどしている。実際に協力していないのは約1割に過ぎない。
専門家の中には「住民基本台帳の個人情報は自衛隊法に定める『資料』に当たらず、提供することに違法の疑いがある」との見解もある。いずれにしても、本人が望まない個人情報が国の機関に提供されるのは問題との指摘も含め、現行のあり方について検討が必要だ。18歳、22歳の個人情報が防衛省に毎年、蓄積されていくのも問題で、募集のために必要ということであれば、目的終了時に焼却すべきではないのか、現行、どのような処理がされているのかも国会で明らかにしてほしい。
政府は平成26年11月17日に社会民主党の福島みずほ参院議員が「個人情報保護法第16条は、個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで個人情報を取り扱ってはならないとしている。個人情報取扱事業者から国の機関は除かれているが、本人が望まない個人情報が国の機関に提供されるのは問題であると考える。問題なしとするならばその根拠を示されたい」また「自衛隊法施行令120条の規定によって市区町村に対して個人情報の収集ができるとする根拠を明らかにされたい」と質している。
これに政府は「自衛隊法第97条第1項及び自衛隊法施行令第120条の規定は、自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる個人の氏名、生年月日等の情報に関する資料について、防衛大臣が市町村の長に対し提出を求めることができる法令上の根拠であると解される」とするのみ。
規定では、自衛隊法第97条第1項は「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行う」としているのみ。また自衛隊法施行令120条は「防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」と規定しているのみで、求められた自治体が応じなければならないとの規定はない。(編集担当:森高龍二)