2月に入り、多くの自治体で認可保育園の入園可否の通知が届く時期を迎えた。TwitterなどのSNSでは保育園に入れないと嘆く書き込みが今年も目立った。
この待機児童問題は、今もなお全国的な社会問題となっており、政府は2020年度末までに待機児童をゼロにする目標を掲げているが、その道のりは険しい。
厚生労働省によると2018年4月現在での待機児童数は1万9895人。前年よりも6186人減となり、4年ぶりに減少した。また2万人を下回るのは10年振りとなった。しかし、2019年10月から導入が予定されている「幼児教育の無償化」を機に潜在的な保育需要が顕在化する恐れもあり、20年度末の待機児童ゼロ達成は難しそうだ
少子高齢化といわれる一方で、保育園を利用できない児童が数多くいる。この一見奇妙な現象は、それだけ昔よりも共働き世帯が増加しているという表れだ。国は、企業内保育所なども積極的に導入し、受け皿を増やそうとはしているものの、やはり都市部では圧倒的に保育所の数が足りていないのが現状だ。実際に待機を免れている児童でも、都市部では園庭のない小規模認可保育園も増えている。雑居ビルの一室に施設を設け、近くの公園で子どもたちを運動させている保育園も珍しくない。
待機児童問題の背景には保育士の不足など様々な課題があるが、実は保育園設立にも課題がある。
たとえ土地があっても補助金年度内予算の関係上4~5月に運営事業者公募発表を行い夏頃に事業者決定するため、4月の開園までに工期が非常にタイトになる場合がある。マンションやオフィス等で用いられる鉄筋コンクリート造は、各階ごとにコンクリートが固まってから次を作るという工程から、他構造体の場合と比べて長い工期が必要となり、年度初めの開園に間に合わないこともあるようだ。
そんな中、主要な部材を工場で生産して現場で組立てる「工業化住宅」という住宅メーカーの技術に注目が高まっている。例えば、鉄筋コンクリート造で設計から施工までで約15ヵ月かかるところを、工業化住宅は約10ヵ月という短い工期で施工できるため、保育園設立時のタイトなスケジュールにも十分対応できる。積水ハウスが設計・施工した認可保育所「ナーサリールーム ベリーベアー深川冬木」は、昨年9月に発表された「第12回キッズデザイン賞」において、優秀賞・少子化対策担当大臣賞を受賞している。高速道路高架沿いの全長180メートルを超える緑地帯を活用して設立された保育園で、都市型保育園の優れたモデルケースとなりそうだ。
同社の建物の特長の一つに高い設計自由度を持つ、独自で開発した「フレキシブルβシステム」がある。主要な構造体に鋼材を用いる重量鉄骨造で、最大の特長は通し柱を不要とすることで、間取りの自由度を飛躍的に高めていることだ。
待機児童問題をはじめとする社会課題に応える、短工期で高品質な施設をつくる住宅メーカーの技術にこれからも注目していきたい。(編集担当:松田渡)