参議院予算委員会。8日の委員会は異例の厳重注意で始まった。金子原二郎委員長が横畠裕介内閣法制局長官に「職責・立場を逸脱する」政治的発言があった、と6日の参院予算委員会で厳重注意。これは立憲民主党小西洋之議員が行政府を監視する立法府の国会議員の役割を質した際に「このような場(国会)で声を荒げて発言するようなことまで含むとは考えておりません」と憮然とした表情で断言し、安倍政権寄りと受け取れる「政治的評価」と受け取れる発言を行ったのだ。
「法の番人」として政治的に厳正に中立・公正であるべき内閣法制局長官が職責・立場を逸脱。野党からは「安倍政権の門番に成り下がった。長官の任にあらず」と辞任を求める声が相次いでいる。
集団的自衛権の行使を一部認める安保法制実現のため憲法9条解釈の変更を行った時から政権よりだったが、今回、いみじくも、本音が出たのだろう。野党を揶揄する発言だった。
この発言は内閣法制局長官に対する「政治的に中立、公正」との国民の信頼を大きく失墜させた。その責任は重大だ。与野党から、国民から信頼される「法の番人」としての内閣法制局に対する信頼回復は横畠氏の長官辞任のほか選択肢はない。ことの重大性を知るべきだ。
金子委員長は「6日の横畠内閣法制局長官の『このような場で声を荒げて発言するようなことまで含むとは考えておりません』との発言は法制局長官の職責、立場を逸脱するもの」と明確に指摘。そのうえで「そのような発言が本委員会で行われたことは誠に遺憾。委員長として、横畠長官に対し、今後、かかる行為のないように厳重に注意を申し入れる」と注意した。
横畠長官は「国会の国政調査権は憲法に規定されている国会の権能であり、非常に重要なものであると考えております」と述べた後「国会での審議の場における国会議員による質問は憲法が採用している議院内閣制の下での、国会による行政府に対する監督権能の現われであると認識しております。(6日の発言は)『声を荒げて発言するようなこと』と評価的なことを申し上げたものであり、行政府にある者の発言として、その立場を逸脱した誠に不適切なものでありましたのでお詫びをして撤回させていただきました。ここに改めてお詫びを申し上げます。今後、二度とこのような発言をせず、国会での審議の場における国会議員の質問の重要性を踏まえ、国会での質問に誠実に答弁してまいります」と釈明した。
が、その一方で「十分反省しているところであり、その反省の上に立って、しっかりと職責を果たしてまいりたい」と辞任の意思のないことを明言した。
辞任せずに国民の信頼を回復させることはあり得ない。立憲民主党の山内康一政調会長代理は「内閣法制局は法の番人。政府の憲法解釈を確定する組織。歴代内閣法制局長官は厳正に政治的に中立、法的に厳正な解釈をすることで与党野党双方から信頼されることが重要とされてきた。国会と内閣からも信頼されるものでなければ務まらない。安倍政権になってから総理の言いなりになるような、政権に忠実な人が選ばれるようになった」と警鐘を鳴らす。
福山哲郎幹事長は会合で「法制局長官に就任して5年になろうとしているが、官邸の意向を忖度し、法案を出すことに注力してきたと言わざるを得ない。そろそろ自身の判断でお引き取り頂きたい」と辞任を求めた。「政権の門番に成り下がった」と批判される人が「法の番人」として最高法規の憲法に照らし、法案チェックや法解釈を行うとすれば、法治国家としてこれほど怖いことはない。国民のために長官職は潔く辞していただきたいと願う。(編集担当:森高龍二)