高齢化社会が進展するとともに社会保障関係費は増加の一途をたどっている。社会保障関係費の中でも医療費、特に老人医療費が膨張していることは高齢化という人口構造を考えれば当然のことだ。
政府はこれまでも健康保険システムの持続性確保のために様々な改革を行ってきた。持続可能性確保のために近年は患者負担の増加、診療報酬、調剤報酬、薬価の改定は引き下げの方向で推移している。調剤薬局もかかりつけ薬局機能など企業として自助努力をより多く求められる方針が示されている。こうした調剤報酬や薬価の改定の影響で近年、調剤薬局は減収傾向で推移してきた。
先月末、矢野経済研究所が国内の調剤薬局市場の調査結果を公表している。これによると2017年度の調剤薬局市場は16年度と比較し増収に転じた企業が増加しているようだ。
最近の市場動向を見ると、15年度頃までは在宅・介護施設の患者調剤などへの対応による処方箋枚数の獲得や後発医薬品調剤体制加算の算定などで業績は好調、新規出店やM&Aによる店舗数の拡大などを実現してきた。しかし、調剤報酬改定と薬価改定の影響を受け、16年度以降は業績が伸び悩み減収傾向へと反転してきた。17年度は増益に反転した企業が多いというもののこれまでと比べ伸び率は大幅に鈍化しており未だ減益傾向の企業も少なくなく市場はまだら模様のようだ。
従前の好調な伸びは医薬分業を背景に大手チェーンを中心とした積極的な店舗数拡大によるところが大きいが、分業率上昇の飽和に伴い新規の院外処方箋発行の伸びが鈍化し新規出店も全体として飽和状態だ。
こうした状況の中で16年から病院敷地内薬局が解禁され新たな形態の出店が可能となり、既存の出店戦略を抑制し、既存店の「かかりつけ薬局機能」を強化し売上拡大を図る動きも増大している。一方で新規出店も同時に進められているが、これまでの自社開発店舗には限りがあるため、大手チェーンを中心に既に固定客を持つ店舗をM&Aで獲得する成長戦略も重要な柱となってきている。こうした動きからレポートでは「大手調剤薬局チェーン経営企業は、M&Aを含む積極的な出店展開により比較的、安定的に業績を拡大する見込みである」としている。
15年の「患者のための薬局ビジョン」を受け調剤薬局市場はかかりつけ薬局機能の強化を迫られ経営環境は大きく変化し厳しさを増している。その中で大手によるM&Aも活発化し業界再編の様相も見せている。なお、レポートでは市場全体の「業績回復は2019年度にずれ込む見通し」としている。(編集担当:久保田雄城)