「自民過半数」の選挙予測報道で待望の終値9500円台に乗せる

2012年12月08日 11:00

6日の東京市場は朝から好条件が揃っていた。前日のNYダウは、財政の崖をめぐる協議について共和党が富裕層増税で譲歩姿勢を見せてオバマ大統領が「1週間ほどでまとまる可能性あり」と発言したのを好感して82ドル高。為替はやや円安ドル高に振れ、大手新聞・通信社各社の総選挙情勢調査には「自民・公明で単独過半数」の予測が揃った。日経平均の始値は66.85円高の9535.69円で9500円台に乗せ、「今日こそは終値9500円台か」と期待させた。結局、最後まで9500円を一度も割り込むことなく、終値は76.32円高の9545.16円で、4月27日以来7ヵ月ぶりに待望の9500円台に乗せて終えた。

トヨタ <7203> 、キヤノン <7751> 、コマツ <6301> 、ファナック <6954> など輸出関連株、建設、不動産などインフラ投資関連株、三菱UFJ <8306> など追加金融緩和に期待する金融株だけでなく、ソフトバンク <9984> など情報・通信、キッコーマン <2801> など食品、イオン <8267> など小売といったディフェンシブ系も幅広く買われた。シャープ <6753> は18円高で値上がり率7位。9803万株が売買され売買高トップ。ソニー <6758> は27円高、パナソニック <6752> は2円高。東証33業種で下落した業種はパルプ・紙だけ。下落したのはKDDI <9433> 、DENA <2432> 、クボタ <6326> 、東京エレクトロン <8035> 、日産 <7201> 、伊藤忠商事 <8001> など。ファーストリテイリング <9983> は変わらず。

7日朝方の為替は、ドル円は82円台前半で前日とあまり変化がなかったが、ユーロ円は106円台にユーロ安が進んでいた。その要因はECBが定例理事会で政策金利の据え置きを決め、2013年の実質経済成長率をマイナス0.3%に下方修正したため。NYダウは39ドル高だったが、為替に反応しやすい東京株式市場は下落が懸念された。

日経平均始値は1.98円高の9547.14円。11月の貿易収支速報で赤字が7189億円と大幅に拡大したが、これが為替を円安に進めて結果的に株価を下支えした。終日、少し高い場面もあったが前日終値近辺でプラスとマイナスを行ったり来たり。アメリカの11月の雇用統計、9日の中国のCPIや鉱工業生産の発表をにらみ、様子見ムードで狭い値幅の小動きに終始した。午後2時に発表された景気動向指数の一致指数は0.9ポイント低下で基調判断は「悪化」に下方修正されたが、市場へのインパクトは特になし。しかし利益確定売りで大引け間際に日経平均は下落してマイナス圏に入り17.77円安の9527.39円で今週の取引を終えた。下落は3日ぶり。

上昇したのは電力、保険、倉庫、証券、銀行など。三井住友 <8316> は49円高。アメリカの安い天然ガスの対日輸出が解禁されるニュースが伝わって関西電力 <9503> 、中部電力 <9502> など電力株が軒並み上昇。東京電力 <9501> も17円上がり売買高4位だった。ファナック <6954> 、ホンダ <7267> も買われた。シャープ <6753> は続伸し17円高。買い人気を集めて1億8600万株が取引され、売買高、売買代金で堂々のトップに入った。値上がりランキングは中堅建設株でにぎわい、東急建設 <1720> が+21.56%で1位、三井住友建設 <1821> が+20.58%で2位、大末建設 <1814> が+14.54%で5位に入った。下落した業種は鉱業、精密、ゴム、情報・通信、小売、石油など。ファーストリテイリング <9983> は120円安。NTT <9432> 、ヤマダ電機 <9831> 、東芝 <6502> 、富士通 <6702> 、ニコン <7731> 、アステラス製薬 <4503> などが下げた。

NTTドコモ <9437> は11月の携帯電話契約数が約4万件も減り純減だったが、株価は4100円高で売買代金4位。ライバルのソフトバンク <9984> は65円安、KDDI <9433> は180円安だった。その理由は日経新聞に「iPhone導入検討も」という記事が出たこと。ドコモの幹部が「来年以降のiPhone導入を考えざるを得ない」と話している。市場はソフトバンクもKDDIもドコモがiPhoneを扱い始めたらかなわない、と見ているようだ。今週は新聞の見出しで市場が何度も動かされた週だった。

 

来週の展望 成り行きを見守りたい要素が多く一進一退か

総選挙の投票日は週末の16日で、新聞社や通信社の情勢分析記事は14日までにあと1回は出る予定。「自民党優位」で変わらずなら今度は大した材料にならないだろう。一方、10日からは北朝鮮のミサイル発射予告期間に入る。市場では「地政学的リスク」はいつの間にか立ち消えになったが、もし発射されたらインパクトはあるはず。石川製作所 <6208> 、豊和工業 <6203> 、東京計器 <7721> など防衛関連銘柄が買われるか。

国内経済指標は10日に経常収支、7~9月のGDP2次速報、法人企業景気予測調査、消費動向調査、工作機械受注速報、景気ウォッチャー調査などが集中する。11日は11月のマネーストック、12日は企業物価指数や機械受注、14日は日銀短観が発表される。期待できないが、選挙前なので悪くてもそれほどのネガティブインパクトはないだろう。

アメリカの経済指標は11日に貿易収支が発表され、13日は卸売物価指数、小売売上高、企業在庫、14日はCPI、鉱工業生産、設備稼働率が発表される。11~12日にFOMCが開催され、12日にその経済見通しが出てバーナンキFRB議長が記者会見する予定。中国の経済指標は9日にCPIや鉱工業生産、10日に貿易収支、14日にHSBCの製造業PMIが発表されるので、底入れをあらためて確認。ユーロ圏の経済指標は、12日に鉱工業生産、14日に製造業PMI、就業者数、CPI改定値などのデータが出る。13~14日にEU首脳会議が開催され、13日にユーロ圏財務相会合でギリシャへの融資の実施を正式承認する見通し。また、12日からウィーンでOPEC総会が開かれるので、原油価格に何か動きが出るかもしれない。

14日は先物、オプション両方の清算値が出るメジャーSQの日。この1ヵ月、主に海外の機関投資家による日経平均先物の売買が大きく膨らんでいるので、久々に値動きが激しいスリリングなSQ算出日になるかもしれない。

総選挙前でもあり、アメリカの「財政の崖」や韓国の大統領選挙も含めた朝鮮半島情勢など、政治に「成り行きを見守りたい要素」が多いので、株価にはそんなに大きな動きはなく、9500円前後で一進一退のもみあいになると思われる。ただし騰落レシオに相場の過熱警戒シグナル(120%超え)が出たりしているので、円安による輸出関連株の好調、自民党の「国土強靱化」による建設株の好調が一息ついたら、平均株価が一段下げての調整局面もありうるだろう。(編集担当:寺尾淳)