年金収入のみの夫婦(夫65歳、妻60歳)が老後30年暮らすには毎月5万5000円不足するため約2000万円が必要になるとする金融庁金融審議会の報告書を受け取らないとした麻生太郎財務大臣(金融担当大臣)が「政府のスタンスと違う」としていた審議会ワーキンググループ(WG)の月5万5000円不足するとする根拠は厚労省の数字であることがわかり、政府のスタンスと違うとした麻生大臣の発言こそが政府のスタンスと違うことが分かった。
菅義偉官房長官は13日の記者会見で「今回の報告書は著しい不安を与えるものであり、審議会の総会も了承していない。議論の過程での問題であり、政府としては正式な報告書として受け取らない立場だ」と改めて受け取らないとした。
記者団が、金融庁金融審議会WGの月5万5000円足りないとの数値は厚労省がWGに示していた数値だ、との指摘には「厚労省が家計調査から高齢者所帯の収支差額で月5万5000円足りなくなるということをWGに伝えたのは事実だ」と厚労省の数字であることを認めた。
その一方で菅官房長官は「報告書に盛り込まれた30年で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になるというのは、WGの独自の意見であると承知している」と苦しい説明をした。月額5万5000円不足なら30年で1980万円不足するのにもかかわらず、これはWG独自の意見になると説明した。
菅官房長官は「いずれにしても議論の過程のものであり、正式な報告書としては受け取らないという判断を担当大臣(麻生大臣)がした」と強調した。
また「公的年金制度は将来にわたり持続可能な制度を構築している」と述べ「公的年金こそが老後の生活設計の柱であることにかわりない」と語り「本年10月からは低年金者に対し年間最大6万円の給付金制度を導入し、介護保険料の軽減も予定している。社会保障の各制度の充実にも取り組んでいる」とした。
日本共産党の志位和夫委員長は会見で「金融庁の報告書を受け取り拒否しようと『5万5000円の差額』という現実は変わらない」と指摘。「政治がなすべきは、都合の悪い真実を、穴を掘って埋めてしまう(焚書坑儒)ような野蛮な行為でなく、貧しい年金をどうやって安心の年金にしていくか、その責任を果たすことだ」と議論していくことの必要を強調した。(編集担当:森高龍二)