ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム障害)などの発達障害は、大人になってから診断されることが多い。先天的な脳障害であるが、大人になってから診断される場合は、知的障害を伴わないことがほとんどである。子供の頃は、個性として見なされるが、社会に出てから通常とされる業務に支障が出ることで気がつくのだ。
症状として、ADHDでは不注意や衝動性、多動でじっとしていられないなどがあり、ASDではコミュニケーションがうまく取れない、興味や関心が限定的である、聴覚などが敏感であることが挙げられる。これらは心の病ではなく、また外見でも判断できない。そのため、医師の診断を受けても、会社に報告するかどうかを悩むケースが多い。
会社に報告できない理由としては、「障害であることを理解されないと思う」「仕事を任せられなくなるかもしれない」などの危惧があるという。その結果としてそのままコミュニケーションがうまくとれなかったり、仕事に不具合が出るなどして、二次障害として鬱や適応障害などになることもある。身体的な障害や病気と違って外見ではわからないため、理解を得られるかどうかが当事者にとっても不安であり、また周囲にとっても理解しにくい場合が多いのだ。また、業務に対する慣れによって、それまでできなかったことが改善されたりするものでもないのが実情だ。
しかし、これらの発達障害は、投薬や適切なサポートで状態を緩和していくことができる。会社などでの業務に関しても、上司や医師との連携などで無理なく就業することが可能になる。発達障害を持つ社員に対して、雇用する側がすぐにでもできる対策としては、業務手順の明確化、口頭のみでなく視覚的に捉えられるようなコミュニケーション方法をとること、業務に関して障害によるこだわりを生かす、などがある。発達障害の特性として、曖昧なことを不得意に感じたり、集中力が持続しない、順序立てて考えることが苦手であるなどのことがあるため、このような配慮が必要なのである。
大人になって障害があると診断されれば、不安を感じて周囲に打ち明けたり会社に報告することをためらう場合が多いというのは仕方のないことではある。その不安とうまく付き合うためや、自分に合った配慮を求めるためにも、会社への報告や相談を行い、各方面との連携のもと働き方を考えることが望ましいと考えられる。(編集担当:久保田雄城)