安倍晋三総理は26日、通常国会閉会にあたっての記者会見をし「社会保障改革は少子高齢化の時代にあって避けることのできない課題だ。10月から年金収入の低い高齢者を対象に年間最大6万円の給付をスタートする。介護保険料も3分の2に軽減し、所得の少ない高齢者の安心をしっかり確保する」と述べた。
安倍総理は「年金は老後の生活の柱だが、財源は現役世代の保険料負担や税金だ。負担を増やすことなく給付だけを増やすことなどできない。現行制度を批判することは簡単だが、年金を増やす打ち出の小槌など存在しない」と共産党など野党の提案をけん制した。
安倍総理は「今後、少子高齢化が急速に進む。支えられる高齢者が増える一方、支え手である現役世代は減っていく。現役世代の負担が過重にならないよう、保険料の上昇を抑え、将来得られる年金給付もしっかり確保するためには、今から年金額を調整していくことが必要だ」と強調し、年金制度の持続性のために必要なものだ、としてマクロ経済スライドの妥当性を訴えた。そのうえで「年金を増やすことは可能だ」とし「支えての厚みを増やせばいい」と述べた。
また安倍総理は政権交代前に比べ株価は上昇したとし「日経平均株価は2万円を大きく上回っている」と強調。「年金積立金の運用益はこの6年で44兆円増えた」とも述べた。
しかし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀のETF(上場投資信託)による株式市場への莫大な「公的マネー」投入が株価を引き上げてきた要因といえ、アベノミクスの成果というのには疑問も。
公的マネーの投入額は2011年3月末で約25兆円だったが、2016年3月末では約39兆円。2018年6月末時点では66兆5000億円(推計)に達している。安倍政権6年のうち、2年3カ月で27兆円も公的マネーが投入されたことになる。日銀がETFを年間6兆円買えば「日経平均を2000円程度押し上げる効果がある」とする専門家の意見がある。
東証1部に占める公的マネーの比率は10.3%となった。公的マネーが東証1部上場企業700社の『筆頭株主』という状態が証券市場の現実だ。公的マネーを株式市場から安全な資産運用にシフトすれば株価は暴落する。株価を支えるために株式市場から公的マネーが引き揚げにくい状態に陥っているにもかかわらず、こうした問題に総理は一切触れず、6年間で44兆円の運用益が出たと強調。しかも直近の昨年10月~12月期では14兆円超の損失が出ていたことにも触れなかった。(編集担当:森高龍二)