「NHK学生ロボコン2019」盛況のうちに閉幕。プロも注目する、学生の創造力

2019年07月15日 10:12

ロボコン

今年も盛況のうちに閉幕した、「NHK学生ロボコン2019」。未来の若手エンジニアが生み出したロボットたちが熱い戦いを繰り広げた

 30年近い歴史を持つロボットの競技大会「NHK学生ロボコン」が、今年も5月に開催され、15年ぶり に京都大学から出場した「京都大学機械研究会」チームが大番狂わせで見事に初優勝を果たし、幕を閉じた。

 この大会は、ロボカップに匹敵する世界有数の国際大会として知られる「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト」(略称ABUロボコン)の日本代表選考会も兼ねており、京都大学チームはこのあと日本代表として、ベトナムやインド、タイなどの代表チームと、8月にモンゴル・ウランバートルで開催が予定されている「ABUロボコン2019」で優勝をかけて競い合う。

 「NHK学生ロボコン2019」には、常連校である「東京大学 RoboTech」、「金沢工業大学 蹄翔」、「長岡技術科学大学 RoboPro長岡」などのほか、初出場の「慶應義塾大学 Ilias 」など、計22チームが参加。創意工夫を凝らした自慢のロボットで競技に挑み、大いに会場を沸かせていた。

 今回の競技は「グレート・ウルトゥー」。ABUロボコン2019の開催が予定されているモンゴルの文化である「馬による駅伝メッセンジャーシステム」をモチーフにした競技だ。モンゴルの遊牧民たちはかつて、各地に張り巡らせられた「ウルトゥー」と呼ばれる中継地で、馬を乗り換えたりすることで、迅速な情報伝達を行っていた。「グレート・ウルトゥー」では、ロボットを馬に見立てて駅伝しながら課題をクリアし、「ゲルゲ」と呼ばれる通行証をゴールまで運び届ける早さを競った。

 競技内容もあってか、今回は馬を模したような4足歩行のロボットが目立ったが、慶應義塾大学や熊本大学の「クモ型」、東京農工大学の「ウサギ型」、 長岡技術科学大学の4本足から リンク型、ロープくぐりという多彩な動きをみせるものなど、各チームアイデアに富んだロボットが披露され、ロボットの専門知識がなくても、見ているだけでも楽しい大会となった。

 また、この「NHK学生ロボコン」は、来るべきロボット社会を担う若手エンジニアの育成という点でも非常に注目すべき大会だ。トヨタ自動車株式会社〈7203〉やパナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社、マブチモーター株式会社〈6592〉などの企業が協賛しているが、金銭面でのサポートだけでなく、製品や技術の提供など、積極的な支援を行っている企業も多い。

 中でも、協賛会社の一つである電子部品大手のローム株式会社〈6963〉は、同社のデバイスを参加するチームに無償提供したり、同社が運営する若手エンジニア応援Webサイト『DevicePlus』にて、大会の現場で取材を実施し、学生たちのロボット開発にかける思いやこだわりを全国のエンジニアに伝えたり、大会出場ロボットの開発経緯やシステムについて

 徹底解剖した資料を独自に作成して配信するなど、学生に寄り添った施策を長年続けている。今回も、優勝した「京都大学機械研究会」チームのインタビューが掲載されているので必見だ。

 同大会は、優勝以外にも、準優勝、アイデア賞、技術賞、デザイン賞、奨励賞、協賛団体による特別賞も設けられている。競技に優勝したロボットはもちろん、プロのロボット開発者でも舌を巻くような斬新なアイデアや技術、デザインなども多く、これからの日本のロボット開発に期待が高まる。「ABUロボコン2019」での京都大学チームの活躍はもちろん、次回の「NHK学生ロボコン2020」も楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)