日本では労働力人口の急速な減少が生じており、既に有効求人倍率が1.6倍を超える状況が持続するなど深刻な人手不足の状況にある。日本においては人口動態から絶対的な労働力の不足に注目が集まっているが、人手不足の要因にはテクノロジーの急速な発展による産業構造の変化を背景にしたミスマッチ人手不足というものがあり、この人手不足の方がより深刻だ。その意味では人手不足の問題は日本のみでなく世界的な課題となっており、これをAIロボット化で解決しようという取り組みは世界的に共通な課題である。
市場調査業の大手である富士経済が世界各地で導入が進む製造業向けロボットの世界市場での動向を調査し、6月24日にそのレポートを公表している。
レポートによれば、2019年における製造業向けロボットの世界市場は1兆2410億円の見込みだ。18年での同市場は、中国でスマホ生産が需要飽和により足踏み状態で推移したことに加え米中貿易摩擦の影響を背景に設備投資が減速したもののロボット市場全体としては緩やかな拡大傾向で推移した。
19年はスマホ新機種向けを中心に需要は回復傾向で推移しており、米中貿易摩擦の影響も緩和し、足踏み状態の分野も軌道を回復するとみられることから引き続き拡大傾向で推移するとみられ上記の見込額となっている。
この拡大傾向は世界的な人手不足の深刻化と人件費高騰を背景に一時的なブームにとどまらずロボット化は今後も持続的に広がりを見せると予測され、レポートでは25年の市場規模を18年比2.5倍の2兆8,675億円になると予測している。
分野別でみると、現況では自動車関連、スマホ関連で組立・搬送系の需要が最大シェアとなっているが、全般的な人手不足の深刻化が進展しており、今後は他業種・分野にも自動化ニーズが広がっていくと予測される。
注目市場としては、人の作業工程、作業スペースにそのまま置き換えが可能なヒト協調ロボットの採用が進んでおり19年の見込みが世界市場で782億円、日本国内で186億円、25年には世界で18年比7.0倍の4110億円、国内は同7.2倍の850億円と予想されている。
またヒト協調ロボットレンタルサービス等の人手不足解消や生産性向上のためのIoT・AIサービスが注目されており、この市場の19年見込みは1039億円、25年には18年比2.2倍の2100億円と予測されている。
日本の人手不足は将来に向けて深刻な課題だがロボット化の加速により少しでもその緩和が進むことを期待する。(編集担当:久保田雄城)