現在の日本の景況は生産用機械の輸出が牽引している。特にスマートフォンの液晶画面を作るために必要な半導体製造装置の対中国出荷が現在の景気の牽引役だ。中国は世界のスマホ工場と言われるが、日本企業の多くが中国に工場を移転したように、中国はその人件費の安さから組立加工型製造業が中核となり経済を牽引している。
しかし近年中国においても経済成長と人手不足を背景に人件費は高騰しつつあり人件費圧縮の観点からも中国では国家プロジェクトとして産業用ロボット産業の育成に力を入れている。産業用ロボットの世界シェアは日本の安川電機をトップとする日本企業が大きな部分を占めているが、今中国国内の産業用ロボット製造業が急成長しているようだ。
こうした動きに関し、市場調査業の富士経済が中国の産業用ロボット市場の動向に関する調査を実施し、これを「急成長する中国新興ロボット関連プレーヤーの最新動向調査」としてまとめ6月17日に公表している。
このレポートでは、中国ロボットメーカー19社、中国ロボット部材メーカー9社の動向分析を中心に、中国国内の組立・搬送系、溶接・塗装系、クリーン搬送系、アクチュエータ系などの産業ロボット市場の現状を分析し、今後の動向についても予測が行われている。
中国の牽引産業はスマートフォンや自動車関連をはじめとした組立加工型製造業であり、これらの業種は産業用ロボットの主要な需要部門であるが、近年の人手不足や賃金上昇を背景に産業用ロボットへの需要はさらなる中長期的な拡大が予測される。
さらに、現在中国では国家主導による中国メーカー・部材メーカーの育成も進んでおり、市場拡大とともに大手、中小など多様なメーカーが実績を伸ばしており、今後は業界内のシェア構造の変化も想定される。
これまで中国での産業ロボット需要は自動車製造での溶接・塗装系が主なものであったが、近年の人手不足や人件費高騰を背景に自動車製造以外の分野にも需要が広がっており、組立・搬送系用ロボットへの需要シフトが起こっている。
市場全体の動向としては2018年後半から設備投資が減速傾向となったものの、19年後半には米中貿易摩擦の緩和を背景に回復基調へと回帰すると期待されている。このため産業用ロボットに対する需要の伸びは堅調に持続し、特に組立・搬送系の急速な需要拡大に牽引され、25年の市場規模は9838億円と18年の2.7倍までに達するとレポートでは予測している。(編集担当:久保田雄城)