日本のITは世界から10年以上遅れているといわれている。さらに今、AIやビッグデータなど高度なモデリングスキルが必要となるテクノロジーがITの主要分野になりつつある。世界的にアナリティスクを担当できるデータサイエンティストなどの人材の不足が指摘されているが、この分野の人材難の問題は日本で最も深刻な状況だ。
AIモデルは言うまでもなく早期に特許を獲得するか否かでその後の市場支配力に致命的な格差を生み出す。特許申請は事務作業であるのでAI・ICT技術を知り尽くしたエンジニア以外の周辺人材の存在も重要だ。この点で日本は非常に劣位な状況にあることは頻繁に指摘されることだ。
1日、特許庁が近年産業競争力の発展において重要視されている深層学習(ディープラーニング)を中心としたAI関連の発明の特許出願について日本国内および海外の状況を調査した結果を公表した。この調査では、国際特許分類G06Nに対応するAIのコア技術に関する発明に加えAIを各技術分野に適用した発明も含まれている。
AI関連発明の国内特許出願件数は2014年以降急増しており、17年は3065件で前年と比べ約65%の増加となっている。このうちAIのコア技術に関する出願は924件で前年と比べて約55%の急増だ。今回のAI関連特許の出願ブームは1991年の2059件を頂点にする第2次AIブームに次ぐ第3次AIブームと呼ばれるものである。
今回のブームでAI関連発明に用いられている主要な技術は機械学習で、その中でも深層学習(ディープラーニング)に関する出願が14年以降に急増しており、17年における国内のAI関連発明の特許出願3065件の内1419件と46%を占め、約半数が深層学習に関連するものだ。前年の1858件中の567件31%と比べてもその急増ぶりが分かる。適用分野としては画像処理や情報検索・推薦、ビジネス関連、医学診断分野が目立ち、近年は特に制御・ロボティクス分野への適用が増加している。
しかし、五庁(日本、米国、欧州特許庁、中国、韓国)及びPCT国際出願については日本の出願件数は多いとは言えない。16年で比較すると米国が4170件、中国が2844件、韓国が567件、PCT国際出願が557件、欧州特許庁が367件で日本は447件だ。日本は米国の10分の1程度で米国と中国の出願件数が突出している。
出願件数の推移から見て、今後世界マーケットは米・中の覇権競争となりそうだ。日本はそれ以前に人材確保の段階にあると言って良い。(編集担当:久保田雄城)