訪日外人観光客の数は2018年12月に3000万人を突破し、政府の目標である20年中に4000万人の実現は確実という状況だ。政府の目標値はこれまでにも前倒しで達成され目標値の上方修正が繰り返されてきた。このインバウンド政策は全体としては計画を上回る大成功を収めていると言っても過言ではないが、訪日客の訪問先が東京、大阪、京都などの大都市に集中し、地方創生ともリンクさせようとする政府や自治体との思惑とは多少ズレのある実績と言えよう。
自治体は民間企業などの協力の下、独自のマーケティング戦略を展開し地元観光施設への誘導を図っている。とはいえ観光地訪問の基盤となるものは交通アクセスであり、その観点からも地方の観光地へアクセスする交通インフラ整備は重要だ。
昨年10月、改正国際観光振興法が施行された。これにより公共交通事業者は外国人観光旅客の利用上重要なものとして選定された旅客施設・車両などを「外国人観光旅客の利便を増進するよう必要な措置」を実施する努力義務が課され、さらに多数の外国人観光旅客の利用が見込まれる指定区間については上記措置に関して実施計画の作成とその実施が義務付けられた。
「外国人観光旅客の利便を増進するよう必要な措置」とは(1)外国語等による情報の提供、(2)インターネット利用による観光情報閲覧を可能とするWi-Fi環境の整備など、(3)洋式トイレの設置など、(4)クレジットカードによる支払を可能とする券売機等の設置、(5)交通系ICカード利用環境の整備、(6)荷物置場の設置、(7)インターネット予約環境の整備の7項目である。
観光庁の16日の発表によれば、現在305の公共交通事業者から実施計画の提出があり、指定区間のうち外国人旅行者の利用が特に多いと考えられる主要線区について20年度中にインバウンド対応が概ね完了する見込みとなった。完了見込みの主要線区は(1)主要7国際空港へのアクセス路線(現時点で概ね対応完了)、(2)新幹線(19年度中に概ね対応完了)、(3)主要都市部における路線(20年度中に概ね対応完了)、(4)主要観光地へのアクセス路線(20年度中に概ね対応完了)である。
観光庁は今後「関係事業者と連携しながら実施計画の着実な実現を図るとともに、対応が未定である部分については、できるだけ早期に実施計画として具体化されるよう関係事業者に強く働き掛けて行く」としている。(編集担当:久保田雄城)