ロームは、大型・小型、両液晶パネル対応の車載6ch LED ドライバ「BD81A76EFV-M」を開発した。3inch から12inch クラスの車載液晶を駆動でき、制御基板のプラットフォーム化に貢献
自動車の電装化、高度情報化が加速する中、液晶パネルのニーズが高まっている。一昔前までは、自動車の車内にある液晶パネルといえばカーナビくらいのものだったが、今や後部ミラーやサイドミラー、ヘッドアップディスプレイ、そしてインパネクラスターのメーターまで液晶パネル化されているものが珍しくなくなってきた。今では軽乗用車にもインフォメーションディスプレイの搭載が常識になりつつある。
中でも、メーターパネルにおいては、スピードメーターやタコメーター、燃料計などの基本的な情報表示だけでなく、アウディに搭載されている「アウディバーチャルコクピット」や、BMW の最新世代のメーターパネル「BMWライブ・コクピット」のように、ナビゲーション機能を表示するようなものまで登場してきている。また、日本車でもトヨタ〈7203〉のレクサスのFスポーツモデルは、2枚重ね式の液晶メーターで、中央のメーターリングが動くと、裏側の8インチのインフォメーションディスプレイが出現するというユニークなギミックを採用するなど、各メーカーによってデイスプレイの活用にも個性が演出されるようになってきた。
液晶パネルに表示される情報量が増えるにつれ、パネル自体も大型になりつつある。そして、パネルの大型化に伴って、液晶バックライトLEDの灯数や明るさに対する要望も、種類の多さと共に多様になりつつある。そこでカギを握るのが、LEDを点灯するための駆動部品「LEDドライバ」だ。
LEDは電気を流せば、それ単体でも光る電子部品だ。しかし、正しく回路設計して電流をコントロールしないと、個体ごとに明るさが異なったり、不安定になったり、時にはLED自体の破損を招いてしまうこともある。LEDドライバを使えば、電流をモニターしながら、LEDに流れる電流を一定に保つように調整したり、電流の不均等を防いで列ごとに明るさが異ならないように調整したり、より細かい輝度調整もできるようになる。また、故障や断線を検知するLEDドライバを使用すれば、システムの信頼性も向上する。
日本の電子企業では、アナログ設計技術に長けたローム〈6963〉がこの分野で世界的にも高い評価を得ている。同社ではこれまでにも、昇降圧制御などの独自技術をLEDドライバに組み込むことで、制御基板の共通設計化やちらつきのない液晶パネルの実現に貢献してきた。
そして、そんなロームが開発した最新のLEDドライバが業界で話題になっている。
同社が今年8月に発表したばかりの液晶バックライト用LEDドライバIC「BD81A76EFV-M」は、大型化する自動車のカーナビやセンターインフォメーションディスプレイ、クラスターパネルに向けて開発された12inchクラスの液晶パネルに対応可能な6chのLEDドライバだ。
従来の4チャネル出力品が8inchクラスの液晶パネルまでしか対応できなかったことに比べると、飛躍的な技術革新といえるだろう。また、同ICの特筆すべき点は、12inchクラスの大型液晶だけでなく従来サイズの小型液晶まで1つのLEDドライバで対応できることだ。つまり、今後は様々なサイズの液晶を組み合わせた制御基板の設計共通化も容易になる。
近い将来に実現するといわれている自動車の完全自動運転化など、自動車業界では今後、今以上に液晶パネルを使った情報表示が重要な役割をしめてくることが予想される。ロームに限らず、高い技術を持った日本の電子部品企業が、より安全で信頼性の高い自動車社会の発展に貢献するとともに、世界の市場で大きな存在感を示してくれることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)