課題の「送配電網」の拡充議論をこそ急げ

2019年09月01日 10:45

画・高所の送電線点検にドローンを起用する東京電力

中西会長は再生可能エネルギーの普及に2点の課題をあげている。最大ネックは「送配電網」の問題という

 経済産業省「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」の下に「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」と「持続可能な電力システム構築小委員会」が設置されたが、再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会は学者が主な構成員。一方、持続可能な電力システム構築小委員会の構成には原発推進の立場の経団連資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行や原発メーカーIHI常務執行役員が入っている。

 経団連は原発再稼働はもちろん「原発の新設・増設が必要」と政府に求める立場だ。経団連の中西宏明会長は団体機関紙8月号で「今、私たちは安全性の確保を大前提に、原子力の活用を進めるべき」と述べ「いつか資源の枯渇などによって化石燃料が使えない世の中が訪れるかもしれない。人類は本当に再エネだけで文化的で快適な生活を営めるでしょうか。将来世代のことを考えれば原子力技術を捨て去るべきではありません。再稼働に加え、リプレース・新増設が必要」と結論づけている。

 経団連の資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行がこの路線で新増設の必要を訴え「原発新増設必要」を小委員会の提言に反映させる可能性が高い。榊原定征経団連名誉会長も同様の考えで、原発再稼働を促している。榊原氏は総合資源エネルギー調査会基本政策分科会会長でもある。

 原発再稼働・新増設ありきの結論でこれを正当化するために小委員会が利用されたという非難や疑惑が生じないよう、委員会の皆さんには国民目線で大所高所から議論されることを期待したい。

 2010年に54基稼働していた原発は今9基稼働(2018年現在)になっている。電力不足は生じていないのはいうまでもない。今後、水力・太陽光・地熱・バイオマス・風力など再生可能エネルギー比率を拡充することで、原発に依存しない社会実現に近づけることを期待する。

 中西会長は再生可能エネルギーの普及に2点の課題をあげている。最大ネックは「送配電網」の問題という。

 「今ある送配電網は再生可能エネルギーの大量導入を想定していないため十分な量の電気を送れない。FIT制度(固定価格買取制度)のもとで電気料金に上乗せされる『賦課金』による補助を受けているが、消費税1%に相当(年間2兆4000億円)する。あまりに割高。(これだけの負担の中では)本格普及させられない」と提起する。FIT制度の抜本的見直しと再生可能エネルギーに対して競争原理の導入が必要だろう。

 中西会長は「送配電網」2点目の課題に人口減少・省エネに加え「分散型電源の普及」が送配電網への設備投資を難しくする要因になっていると提起した。

 「屋根に太陽光パネルを載せた家庭は晴れた日の昼間は送配電網からの電気をほとんど買わない。発電しない雨の日や夜間は他の家と同じ、1軒分の電線がないと困る。今、託送料金(送配電網の利用料金)は大部分が『従量料金』なので、こうして設備を使ったり使わなかったりする人が増えると、引いた電線の費用を回収できなくなる心配がある」というのだ。

 「用意している設備の分はきちんと費用を負担してもらわなければ困る。従量料金の割合を減らし、その分、基本料金を引き上げる必要がある」と指摘する。

 再生可能エネルギーの普及、原発ゼロには、中西会長の提起した「送配電網」設備への投資をどう促し、設備コストを電気料金にどう反映させることが適正か、その際の利用者負担はどうなるのか、こうした議論こそ早急に進め、概要を国民に示せるよう、政府に早急な対応をお願いしたい。(編集担当:森高龍二)