超スマート社会に向けて動き出した日本。ブロックチェーンで賃貸物件の内覧もスマートに?

2019年10月06日 12:30

ブロックチェーン (1)

ブロックチェーン技術を活用した企業間情報連携により、賃貸契約の利便性向上を目指す

 スマート社会を超える「超スマート社会」が、すでに実現に向けて動き始めている。日本政府は、AIやIoT、ロボットなどの革新的な科学技術を用いて、社会のさまざまなデータを活用することで、社会のさまざまなニーズにきめ細やかに対応し、あらゆる人が質の高いサービスを受けられる豊かな社会像として「Society 5.0」を掲げ、その実現を目指している。そして、そこで重要なキーになるテクノロジーが「ブロックチェーン」だ。

 ブロックチェーンは、ビットコインなどの仮想通貨に使われるデータ管理システムとして有名だが、何も仮想通貨専用に開発された技術ではない。ブロックチェーン最大の特長は、関数を使った暗号によってユーザー同士が取引データを分散して管理し合うという点だ。このおかげで、特定の管理機関一か所に権限を集中させる必要がなくなるので、システム障害にも強くなり、改ざんも事実上不可能。さらには低コストでの運用が可能になる。

 現状、このメリットがユーザーに最も分かりやすく活用されているのが仮想通貨の取引だが、それに限らず、為替や決済等の金融分野への応用、さらにはAIやIoTと結び付くことで、今後、社会のあらゆる場面での活用が期待されている。

 身近なところでいえば、住宅メーカー大手の積水ハウス〈1928〉と通信事業のKDDI〈9433〉、総合電機メーカーの日立製作所〈6501〉の3社が、今年4月から、不動産の賃貸契約における利便性向上を目的とした興味深い検証を行っている。

 その取り組みの第一弾として、同社らは、ブロックチェーン技術を用いて、積水ハウスとKDDIそれぞれが持つ本人確認情報を連携させることで、賃貸物件の内覧申込みの際に必要な現住所や電話番号などの入力を簡略化するなど、ワンストップサービスのビジネスモデルやサービス性について検証を行ってきた。

 さらに9月27日には、検証の第二弾として、損保ジャパン日本興亜〈8630〉、東京海上〈8766〉、三井住友海上〈8725〉、大阪ガス〈9532〉、東邦ガス〈9533〉が新たに参画することも発表した。賃貸契約を結ぶ際の保険契約やインフラの手続きにおいて、本人確認情報を本人の同意のもとに連携して、利用開始や解約などの手続きを簡略化する検討を進めていくという。これが実用化されれば、賃貸契約者はもちろんのこと、不動産業者側にとっても、かなりの負担軽減につながるのは間違いない。

 また、一度でも不動産の賃貸契約をしたことがある人なら、休日などに時間を合わせて予約し、物件を管理している不動産会社の店舗に赴き、担当者と一緒に物件を見て回った経験があるだろう。

 これまで不動産の賃貸契約時には当たり前のように行われてきた情景だが、積水ハウスらはここでもブロックチェーン技術を活用した本人確認情報に基づいて、スマートロックによる内覧許諾を行い、不動産管理会社の担当者が立ち合わなくても、入居希望者が予約した時間に内覧できるようにするという検証も進めているようだ。

 確かに、スマートロックがあれば、いちいち鍵を持たなくても、スマホの操作で扉が開く。入退室の管理もデータに残るし、管理側で遠隔管理もできるから安心だ。

 入居希望者は内覧したい物件を不動産業者に日時指定するだけで、好きな時間に、気兼ねなく物件を内覧できる。不動産業者の担当者も、物件巡りに同行する必要がなくなり、働き方改革にもなるだろう。

 今回、ここに挙げたのは不動産関連分野でのブロックチェーン技術の活用法の一例だが、他にも、2018年に石川県の加賀市が全国に先駆けて「ブロックチェーン都市」構築を宣言し、ブロックチェーンを用いた新しい行政システムの検証を始めているほか、医療分野でも、スロベニアでブロックチェーンを利用した医療記録プラットフォームの開発が行われるなど、世界中で様々な分野での活用が模索されている。

 積水ハウスらの取り組みは、2020年の実用化を目指しているという。どんな未来を示してくれるのか、今から楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)