文科大臣陳謝より、求められる「制度再考」

2019年10月29日 07:33

 萩生田光一文部科学大臣が大学共通入学試験の英語の民間試験導入を巡り「裕福な家庭の子どもが回数を受けてウオーミングアップできるというようなことがあるかもしれないが、自分の身の丈に合わせて2回をきちんと選んで頑張ってもらえれば」などと発言したことに28日、「説明不足な発言で、おわび申し上げたい」と陳謝した。

 「どのような環境下にいる受験生においても自分の力を最大限発揮できるよう自分の都合に合わせて適切な機会をとらえて2回の試験を全力で頑張ってもらいたいという思いで発言した」と弁明。そのうえで「そうは言っても国民の皆様、特に受験生の皆さんに不安や不快な思いを与えかねない説明不足な発言だった。お詫び申し上げたい」と陳謝した。そして「受験生が安心して受験できるよう一つ一つの課題の解決に努めていきたい」と述べた。

 萩生田大臣の陳謝にも野党は大臣の資質を問う姿勢を変えていない。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「格差や差別を固定化しても良いのだ、ということを認めるような発言で、許しがたい発言だ。今日の会見も拝見しましたが、まったく説明になっていない。今の文科省の制度的な不備、配慮の無さ、準備不足について、まったく反省の色がない」と強く非難した。

 福山幹事長は「文科大臣としてこういった発言をする方を文科大臣に置いておくことは許しがたい」と大臣辞任を求めていく姿勢をうかがわせた。

 同党の蓮舫副代表はツイッターで「不安や不快な思いを与える以前に、制度導入そのものが受験生のおかれる環境では乗り越えられない格差が固定することを陳謝し、詫びて、制度撤回をすることこそが文部科学大臣の仕事です」と制度撤回をすることだ、と発信した。

 日本共産党の志位和夫委員長は萩生田大臣の陳謝にツイッターで「自分の身の丈に合わせて→自分の都合に合わせて。同じことを言っているだけで、何が批判されたか全く分かっていない。『説明不足』でなく、憲法に対する理解が全く『不足』している。大臣失格です」と文科大臣としての資質に疑問を投げた。

 大学共通入学試験「英語」の民間試験導入を巡っては試験会場が都市部に偏っているうえ、受験料も高く、受験生に経済的に負担を強いることになる。地方の学生にすれば、受験料以外にも交通費や宿泊費などが新たな負担になる。

 加えて、民間業者に任せて公平・公正が完全に担保できるのか。試験業者が試験問題集や試験対策講座を開講すれば、問題集購入者や講座受講者に有利な試験になることは容易に想像できる。こうしたことも含め「利権誘導政策」との批判も出ており、制度導入には解決すべき課題が多く浮かびあがってきており、早期導入より再考することが求められている。(編集担当:森高龍二)