大学入試を利潤追求の道具にさせてはならない

2019年11月10日 10:25

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大学入試共通テストの「英語」民間試験導入問題に続き、浮上している国語・数学1・A試験の記述式問題の導入。受験生からは「我々を実験台にするのか」と怒りの声が聞こえる状況になっている

 大学入試共通テストの「英語」民間試験導入問題に続き、浮上している国語・数学1・A試験の記述式問題の導入。受験生からは「我々を実験台にするのか」と怒りの声が聞こえる状況になっている。採点をアルバイト大学院生に任されて受験生が納得できるだろうか。採点の公平性にも疑問が残る。

一連の問題で明らかになった「受験機会」と「試験判定」の「公平・公正」が担保されない状況下で民間業者が「ビジネスチャンス」などと利潤追求手段にすることを認めること自体、「教育」の観点からは相容れないものだ。政府は白紙に戻して「ゼロから見直す」真摯な姿勢を持つべきだろう。

 「英語」の民間試験導入に関しては、安倍晋三総理が議長を務める「教育再生実行会議のメンバーに、当時の下村博文文部科学大臣に献金していた大手塾グループのメンバーが入っていたほか、文科省から天下りして理事長に就任していた一般財団法人が大手業者と検定試験を共催することになる事例や民間試験導入を主導したとされる人物が財団の評議員についていたなど、民間試験導入までの経緯について、利害関係での誘導はなかったのか、この点でも徹底した検証を行い、公(おおやけ)にする必要があるだろう。

 萩生田光一文部科学大臣は衆院予算委員会で立憲民主党の大串博志議員から文科大臣が新たに設置する「検討会」のメンバーに「まさか、試験実施団体、実施業者の方は入れられませんよね」と釘を刺され「ヒアリングはさせていただきたいと思うが、方向を決める中に特定業者が入るというのは好ましと私も思いません」と答弁した。「入れない」と明言しなかったが「好ましくないこと」は絶対に避けることを望みたい。

 今回の国会論戦を通して浮き彫りになった安倍総理が競争原理優先の新自由主義を大学入試に導入しようとする姿勢には賛同できない。公正公平を徹底すべき大学入試の場が利潤追求の場に変質する危険がある。残念なのは安倍総理にその自覚がないことだ。

 6日の衆院予算委員会で大串議員は「総理自身も教育に関し民営化ということは相当強く意識されている。学校に関して市場原理や民営化といった考え方を過度に入れることは問題だと思うが」と質した。安倍総理は「民間がやると悪くなる、民間はよこしまな考えを持っている、そういう考え方はとりません」ときっぱり反論したのだ。

 総理は「民間の活力、民間の知恵を導入していくのは当然あってしかるべきと思う」と答えたが、受験生の将来を大きく左右する「大学入試共通テスト」を民間会社のビジネスチャンスに変えて、どうして受験生のプラスになるのか。ここには弊害ばかりが浮き彫りになっている。

 (1)試験会場が都市部に偏在(2)受験料の高さ(3)地方の学生には受験料以外にも交通費や宿泊費の新たな負担を強いる。

 そして民間業者に任せて公平・公正が担保できるのか。試験業者が試験問題集や試験対策講座を開講すれば、問題集の購入者や受講者に有利に働くことが容易に想像できる。新たに設置される検討会ではこうした懸念や課題を解消するために、利害関係にある民間試験実施団体や業者は検討会の構成メンバーに入れないこと、検討会での議論は常に透明性を確保し、情報公開すること、これができなければ再び不審を招くことになる。

 萩生田文部科学大臣は「(民間の検定試験を)使うとか、使わないとかいうことを今から明確にするのではなく、どういう仕組みが受験生にとって一番いいものになるのか、しっかり議論したうえで積み重ねてまいりたい」と答弁した。

民間試験導入を白紙に戻し、ゼロから検討していくことが求められている。そして現行制度よりもベターな方法が見つからなければ、現行制度を継続させることも良いのではないか。そこも含め検討すべきだろう。受験生の視点で公正公平を徹底すべき大学入試を、民間企業や天下り団体の利潤追求の道具にさせることは許されない。(編集担当:森高龍二)