12月3日に公表された国際学習到達度調査(PISA)によると、日本の高校生の読解力が著しく低下しているという。過去2012年調査では過去最高の4位、前回調査の2015年では8位だったが、今回はそれをも大きく下回る15位という、散々な結果となった。読解力テスト1位の中国とは、およそ50点もの差をつけられている。
テスト形式に対する不慣れや苦手分野からの出題など、順位が下落した言い訳はいくつか挙げられる。しかし、今回の調査では、テストを受けた生徒の中で、読書習慣のある生徒の方が、読書習慣の無い生徒より、平均点が高いということも明らかにされていることからも、最も大きな原因は明らかだ。世の中のデジタル化の発展に伴う深刻な文字ばなれ、活字ばなれの問題が如実に現れた結果と言えるのではないだろうか。
今回の調査は高校生が対象となったが、読解力は何も学生だけに必要とされるものではない。社会人になっても、読解力が求められる場面は多い。読解力がないと、ビジネスの大事な文書を読み間違えたり、理解できなかったり、ミスをしたり、チャンスを逃すことも多いだろう。学生時代よりもむしろ、大人が日常的に求められるスキルの一つだ。もしも自分の読解力の未熟さや衰えを自覚しているのなら、改善した方がいいだろう。
とはいえ、読解力を高めるにはどうすれば良いのだろうか。一番手っ取り早いのは、多読することだ。
ビジネス書でも小説でも、たとえ週刊誌でも、とにかく活字を読むという機会に慣れることで読解力は高められる。しかし、そもそも読解力が低い人は、長編を読むのが苦手という場合が多い。
そこでおススメしたいのが、企業がキャンペーンなどで募集しているエピソードなどだ。
例えば、象印マホービン(株)では、同社で展開する『マイボトルキャンペーン』10周年を記念して、ステンレスボトルに入れていつまでも温めておきたくなるような「あなたのいつまでも大切にしたいエピソード」を一般募集し、その優秀作を同社のホームページ上で公開している。どれも短めの文章で心温まる内容なので、「読書はちょっと……」という人でも読みやすく、楽しめるのではないだろうか。
文房具メーカーのマックス株式会社でも、「マックス心のホッチキス・ストーリー」と題し、何気無い日常生活の中で、いつまでも心に留めておきたい、ホッチキスしておきたい思いや出来事を募集し、同社のサイトで公開している。2010年から毎年、一般公募しているキャンペーンなので、興味がわいたら、読むだけではなく、文章を応募してみるのもいいだろう。読むだけではなく、書くことでも読解力は養われるし、構成力も身につく。しかも、こういったコンクールなどを利用すれば、楽しい趣味にもなりえるだろう。
また、読むのも書くのも苦手という人は、絵やイラストを描いてみたらどうだろう。読解力には、イメージする力も大きく影響する。絵を描くことでイメージ力が培われれば、おのずと読む力の底上げにもなる。
そんな人に最適なのが、ミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場で毎年開催している「ミツバチの絵本コンクール」だ。これは、ミツバチをメインテーマに「自然環境の大切さ」や「社会とのつながり」「生命の尊さ」を表現した絵本のコンクールで、ストーリー部門とイラスト部門で募集が行われる。残念ながら、現在募集中の「第3回ミツバチの絵本コンクール」ではストーリー部門の募集はすでに締め切られてしまったが、イラスト部門は 2020年の1月20日まで募集している。例年、絵の上手下手ではなく、絵本のストーリーに沿った心温まる作品が入賞しているので、興味があるのなら、挑戦してみる価値はあるだろう。
学生はもちろん、ビジネスにおいても読解力は重要なスキルだ。寒くて部屋にこもりがちな季節だからこそ、家にいる時間を少しでも有効に活用して、楽しみながら自らのスキルアップに繋げてみてはいかがだろうか。 (編集担当:今井慎太郎)