厚生労働省が2018年に発表した「平成29年簡易生命表」によると、 日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性は87.26歳で、過去最高を更新している。世界的にみても、日本は長寿国で、男性は香港とスイスに次いで3位、女性は香港に次いで2位となっている。
しかし、いくら寿命が延びても、それが単純に幸せと結びつかない場合もある。
例えば、厚労省の調査では65歳時点の平均余命は、男性で19.57歳、女性で24.43歳と発表されているが、この20数年をいかに充実して過ごせるかが大きな問題となってくるだろう。晩年の大半を病院や福祉施設で過ごさなければいけないようなことでは、いくら長寿でも幸せとは言い難いのではないだろうか。加齢とともに身体の機能が衰えるのは仕方がないことだし、病院に通うことも多くなるだろうし、時には入院することも必要だろう。でも出来ることならば、そういう時間を最低限にとどめ、住み慣れた自宅や生活圏の中で日常生活を送り続けたいものだ。
そんな中、住宅メーカー大手の積水ハウス株式会社〈1928〉が2020年1月8日、人生100年時代の理想的な住宅サービスの開始を発表し、世界的な話題に上がっている。
米国ネバダ州・ラスべガスで開催されている世界最大級のコンシューマー・エレクトロニクス見本市「CES2020」で積水ハウスが発表したのは、世界初の「在宅時急性疾患早期対応ネットワークHED-Net(In-Home Early Detection Network)」の構築だ。これは昨年の「CES2019」で同社が発表し、同社が掲げる「『わが家』を世界一幸せな場所にする」というビジョンのもとで進める「プラットフォームハウス構想」を受けて推進してきたプログラム。今年は人の暮らしに寄り添った環境での「生活者参加型パイロットプロジェクト」による社会実装を開始する。
「HED-Net」を簡単にいうと、住まい手の健康異常を検知した場合、緊急通報センターに通知するというシステムなのだが、このシステムの最大の特長は、住まい手にストレスをかけない「非接触型センサー」を採用している点だ。いくら便利なシステムでも、それに手間がかかるようではストレスになる。最先端のシステムの中には便利なようで、結局は不便になることも多い。とくに高齢者になると、新しいルールを生活の中に持ち込むのは困難になる。その点、「HED-Net」ならば、そんな心配やストレスを受けることもなく、バイタルデータを採取して健康を管理してくれる。今まで通りの日常を送っているだけで、最先端の技術の恩恵を受けることができるというわけだ。
「HED-Net」の具体的な流れとしては、住宅内で住まい手のバイタルデータを非接触で検知・解析し、急性疾患発症の可能性がある異常を検知したときには、緊急通報センターに通知、オペレーターが呼びかけることにより安否確認を行い、必要であれば救急への出動要請、救急隊の到着確認、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行うというものだ。これは世界初の仕組みで、同サービスは「安否確認システム」として国内のシステム特許を取得し、国際特許出願中だという。
積水ハウスの仲井嘉浩社長は「CES2020」のプレゼンテーションで、「高齢化は今後、世界的にも急速に進展すると見込まれています。住宅メーカーである積水ハウスが健康に注目するのは、日本が高齢化率で世界最高であり、人生100年時代を迎える成熟社会を迎えているという2つの課題に直面しているからで、その近未来の世界の社会課題の解決に我々が挑戦します。」と語った。
積水ハウスが取り組んでいる「HED-Net」が普及すれば、家庭で起こる急性疾患の早期対応ができるようになり、きっと人生に幸せをもたらしてくれるに違いない。(編集担当:藤原伊織)