トヨタ、満を持して「空飛ぶクルマ」の開発に着手、米Joby Aviation社と協業

2020年01月19日 11:16

Toyota_eVTOL

Joby Aviation は2009年設立。本社は米国カリフォルニア州サンタクルーズ。eVTOLの開発に取り組み、将来は空飛ぶタクシーサービスの提供を目指す

 トヨタ自動車が、遂に「空飛ぶクルマ」の開発に着手する。同社は、新たな空のモビリティ事業として、電動垂直離着陸機(eVTOL/Electric Vertical Take-Off and Landing)の開発・実用化を進めるJoby Aviation社と協業することに合意したと発表したのだ。

 Joby Aviation社との協業において、トヨタは自動車の開発・生産・アフターサービスで培った強みを活かし、今後、社会的ニーズが高まると予想される空のモビリティ事業の早期実現に向けた取り組みを開始するという。

 背景はこうだ。近年、国内都市部の渋滞や環境負荷の低減、また過疎地域の輸送手段の確保など、さまざまな交通課題の解決に向け、eVTOLを用いたモビリティサービスの実現が期待される。このeVTOLの開発・製造における技術は、電動化、新素材、コネクティッドなどの分野において次世代環境車の技術との共通点も多く、eVTOLは自動車事業との相乗効果を活かした新たなモビリティ事業に発展する可能性があるとした結果だという。

 世界的に都市部における将来の空飛ぶクルマの活用は注目されている。米モルガン・スタンレーによると2040年までに、空飛ぶクルマの全世界の市場規模が1兆5千億ドル(約165兆円)に成長するとしている。垂直離着陸できるため滑走路が不要で、電動化で環境性能に優れるeVTOLは「空飛ぶクルマの本命」とされ、電動化や量産化などで自動車メーカーの技術開発と共通項が多い。世界自動車大手が競って参入を表明し、韓国・現代自動車がウーバーと空飛ぶタクシーの開発で提携。独ダイムラーはスタートアップの独ボロコプターに出資し、独ポルシェは米ボーイングと組んだ。

 今回、トヨタのJobyと協業は、トヨタが生産技術の部分で設計、素材、電動化の技術開発に関わり、トヨタ生産方式(TPS)のノウハウを共有する計画だ。最終的には、高い品質、信頼性、安全性、そして厳しいコスト基準を満たすeVTOLの量産化を達成する。

 トヨタ自動車社長である豊田章男氏は、「トヨタは、自動車事業に加え、今回、Jobyという力強いパートナーとともに、新たに“空”のモビリティ事業にチャレンジします。空のモビリティは、未来のモビリティ社会における人々の移動と生活を大きく変革する可能性を秘めており、空のモビリティの実用化はトヨタ創業以来の夢でもあります。今回の協業により、陸だけでなく空にも、移動の自由と楽しさをお届けするモビリティの実現に貢献できることを嬉しく思います」と語っている。

 JobyのCEOであり創立者であるジョーベン・ビバート氏も、「今回の協業は、世界を代表する自動車メーカーによるJoby及びこの新しい産業に対する資金とリソーセス面での前例のないコミットメントです。トヨタは、その細部まで行き届いた製造工程がもたらす商品の品質と信頼性の高さで世界中に知られています。10億人以上の毎日1時間以上の通勤時間短縮を手助けするという私たちの夢の実現に向け、トヨタのエンジニアリングと優れた製造技術を活用できることを楽しみにしています」と述べたという。

 なお、トヨタは、Jobyが合計5.9億ドルを調達したシリーズCの出資ラウンドのリードインベスターとして、3.94億ドルの出資を行ない、トヨタの副社長・友山茂樹が同社の取締役に就任する。

 両社は、トヨタの自動車生産及び技術開発の知見と、JobyのeVTOL開発のノウハウを持ち寄り、未来のモビリティ社会の構築を目指す。

 eVTOLは、短距離・多頻度運航に適した設計で、都市圏にて通勤者や出張者、旅行者によるオンデマンド利用が見込まれる空飛ぶタクシー市場のニーズに合致する。また、ヘリコプター、ドローン、小型飛行機の要素を内包し、信頼性、環境性(ゼロ・エミッション)、巡行速度、静粛性などに優れる。運用コスト、メンテナンスコストも低く抑えることができ、強化された安全機能も備えている。機体の詳細及び生産計画など協業の具体的な取り組み内容については追って公表予定だ。(編集担当:吉田恒)