米国には「25年ルール」と呼ばれるクラシックカー登録制度ある。この規定は、米・高速道路交通安全局(NHTSA)が、初登録から25年以上経過したクルマであれば、新型車で右ハンドル車の輸入を禁じているにも拘わらず、輸入しても良いという規則だ。
そのため、この制度を利用して、1990年代の日本製スポーツカーで米国に輸出されなかった右ハンドルの高性能スポーツ車が多数流出している。1989年に登場したR32型からはじまるRB26DETT型2.6リッター直列6気筒DOHCターボエンジンを搭載した日産スカイラインGT-Rを筆頭に、右ハンドルスポーツの人気が急上昇しているという。
クルマが右側通行の米国を含む北米では、右ハンドル車の輸入は認められていない。しかし、北米で一般ユーザーが乗れないはずの右ハンドル車が、「25年ルール」による緩和措置で、1980〜1990年代に登録された日本の高性能スポーツカーの中古車が、北米に輸出増なのだ。
米「25年ルール」はハンドルの位置の規制以外も緩和する。米国では車検の代わりに「スモッグテスト」と呼ばれる排ガス検査があるが、そのような検査も必要ない。つまり製造から25年経過したクルマであれば、ほぼすべての規制がなくなる。
日産スカイラインR32・GT-Rは歴代GT-Rの中でもっとも販売台数が多く、国内の中古車市場でも比較的潤沢に流通していたが、米25年ルールの後押しによる米国ブームとなり、大量に米国へ流出しているというのだ。
加えて、日本国内では旧車を所有・維持しにくい環境があることも、北米流出を加速させているようだ。
エコカー減税の導入で燃費が良く環境性能が高いとされる新型車を販売する政策を推し進めた日本政府は、そのせいで減った税収を補うために、国内の旧車ユーザーに重税を課している。初度登録から13年経過してクルマを所有すると自動車税がアップする。また、13年と18年を超すと車検毎の自動車重量税も跳ね上がる。
具体的に、小型/普通乗用車は初年度登録から13年を経過すると自動車税が115%に高まる。排気量1.6〜2リッターエンジン車の自動車税は、13年以内ならば年額3万6000円だが、登録から13年(ディーゼル車は11年)を超えると、年額で概ね15%もアップする。つまり、旧車ユーザーからたくさんの税金を取って、エコカー減税を担保しているというわけだ。
軽自動車も同じです。軽乗用車税は、初届け出から13年以内であれば年額1万800円ですが、13年を超えると1万2900円に跳ね上がります。2015年3月以前に届け出た軽自動車ユーザーなら13年超で、毎年7200円だった税金が一気に180%まで増えることになる。
自動車重量税はもっと大きくアップする。小型/普通乗用車なら、初年度登録から13年を経過すると139%、18年を経過すると154%に増える。車両重量が1001kg以上1500kg以下のクルマの場合、一般的な税額は2万4600円だが1、3年超で2年分3万4200円、18年超で3万7800円にまでアップする。
つまり、日本では18年以上クルマを所有し続けるには、相当なコストがかかるということ。まさに旧車ユーザーいじめとしか言いようがない税制なのだ。
旧車ユーザーを軽視する日本から、名車と言われた80年代〜90年代の国産スポーツカーが北米へ向かって流失している。(編集担当:吉田恒)