ロームは超低損失SiCトレンチMOSFETを開発。600Vでは0.79mΩ・cm2、1200Vでは1.41mΩ・cm2という世界最小の超低オン抵抗を実現しており、1mΩ・cm2以下のオン抵抗を実現したのは世界初の快挙となる。
半導体メーカーのロームは、超低損失SiCトレンチMOSFETを開発。600Vでは0.79mΩ・cm2、1200Vでは1.41mΩ・cm2という世界最小の超低オン抵抗を実現しており、1mΩ・cm2以下のオン抵抗を実現したのは世界初の快挙となる。
今回開発されたSiCトレンチMOSFETは、従来のSi-MOSFETに比べて1/20以下、量産化されているSiCデバイスと比べても1/7以下のオン抵抗となり、実用化されれば、身の回りのあらゆる所の電力変換器で発生している電力損失(導通損失)を1/20以下にまで大幅に低減することが期待できるという。
さらに基板薄化と微細化やチャネル移動度の向上に加え、独自の電界緩和構造であるダブルトレンチ構造の採用により超低オン抵抗と高耐圧の両立に成功。基板の厚さを100umまで薄化し、微細化とチャネル移動度を2倍に向上することで1mΩ・cm2という従来の壁を突破した。また、ゲートとソースにトレンチを形成するダブルトレンチ構造により、高電圧時におけるトレンチ底部ゲート酸化膜破壊の克服に成功したことで、高耐圧化も実現している。
なお、このSiCトレンチMOSFETは、12月5日から7日に米国ワシントンD.C.で開催されたIEDM(国際電子デバイス会議)でも発表され、2013年度中を目途に実用化を目指す。
一般的に電力を発電してから各種機器で消費するまでの間には、多い場合で50%もの電力が失われているという。その原因は、電流を交流から直流に変えたり、電圧を上げ下げしたりと数多くの電力変換が繰り返されること。そこに今回開発されたSiCトレンチMOSFETを用いれば、現在の消費電力に対し発電量を大幅に抑えることが可能となることは想像に難くない。また、新興国における今後の電力消費量の爆発的な増大も懸念されて、再生可能エネルギーや省エネ製品などに世界中から注目が集まり、研究・開発が急がれている。
電力問題やエネルギー問題、地球環境問題に大きく貢献するであろう、電力損失を減らす技術。その高い技術を有し、SiCデバイス事業を次世代半導体事業の中核技術の一つとして位置付けて、世界で初めてSiC-DMOSFETの量産に成功するなど、業界をリードしてきたローム。そのロームが世界をリードし、京都から、日本から、たった1cm2という小さな世界で、地球という大きな世界を変えようとしている。