トヨタの自動運転最先端技術開発を担うTRI-AD、高精度地図生成の実証実験に成功

2020年03月17日 05:18

TRI-AD MAP

Maxar、NTTデータ、TRI-ADによる高解像の衛星画像を用いた自動運転用高精度地図の自動生成に向けた実証実験のひとコマ。写真から自動車や影、建物の倒れこみによる遮閉などの地図以外の要素を自動で解析、除去、補正することで、必要な地図情報を自動抽出する

 トヨタが一昨年設立した、自動運転ソフトウェアの先行開発を行うトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)が、新たな自動運転のための地図作成技術の開発に成功したと発表した。従来コストがかかるろされてきた、広範囲での網羅が難しく自動車専用道路に限られていた高精度地図生成に対する効果的な手法を追及してきたTRI-ADは、この度、複数のパートナーと実証実験を実施し、自動運転に必要な相対精度50cm以下の地図生成が可能であることを確認したとしている。

 今回の実証実験では、専用の計測車両を使用せずに、衛星や一般車両から得られる画像データなどを元に、自動運転用の地図情報を生成するTRI-ADの自動地図生成プラットフォームであるAutomated Mapping Platform(AMP)上の車両データのデータ形式を変換し、アルゴリズムを補正することにより、他社のプラットフォームで活用する。

 各実験に参加した組織の役割・概要は以下のとおりだ。

 宇宙技術ソリューションをリードするマクサー・テクノロジーズ社(Maxar)、日本のITサービスを牽引する株式会社NTTデータ(NTTデータ)とTRI-ADは、2019年4月25日より3社合同で高解像の衛星画像を用いた自動運転用高精度地図の自動生成に向けた実証実験を行ってきた。その中で、衛星画像に写る自動車や影、建物の倒れこみによる遮閉などの地図以外の要素を自動で解析、除去、補正することで、必要な地図情報を自動抽出することに成功した。東京23区と海外6都市で実験を実施し、自動運転制御に活用できる相対精度の高い地図生成を実現し、自動運転用地図として有用であることを確認したという。

 道路インテリジェンスのプラットフォームを提供するCARMERA Inc.(CARMERA)とTRI-ADは、東京23区と米国2都市で、一般車両にも搭載可能なドライブレコーダーを使用した自動地図生成技術の検証を実施。結果、ドライブレコーダーのデータだけで自動運転に必要な相対精度40cm程度の地図生成に成功した。両社が連携し、CARMERAのReal-Time Events and Change Management engineと同じマシンラーニング技術などを使用することで、自動運転に必要な最新情報を判別し、HDマッピング・システムに送信、更新することが数分でできるようになる。これにより、AI認識に必要な画像データを収集し、幅広いエリアの地図生成の可能性について実証できたという。

 また、TRI-ADは位置特定技術をリードするTomTom International BV.(TomTom)と別の実証実験を行、TRI-ADが集めたAMPの車両データの信頼性を検証し、TomTomのクラウドベースの地図生成プラットフォーム用にデータ形式を変換し、TomTom独自のアルゴリズムを活用して入力することで、自動運転に必要な車線情報を含む一般道高精度地図の生成と更新に成功した。

 TRI-ADは、新たに世界をリードする位置情報データおよび位置情報技術のプラットフォームを提供するHERE Technologies(HERE)との共同実証実験もじっしした。その結果、TRI-ADの車両データの位置誤差をHEREの高度セルフヒーリング技術で補正することにより、自動運転に必要な車線情報を含む一般道高精度地図の生成に成功。車両データをHERE Platformに入力することで、HERE独自のアルゴリズムで高精度の一般道地図を自動生成することができる。同社のHD Live Mapは、すでに世界有数の自動車メーカーのレベル3自動運転開発プログラムにおいて採用されているテクノロジーでもある。

 TRI-ADは、これらの実証実験によって、自動運転に活用する地図の更新期間の短縮、エリアの拡大、作成および維持コストの大幅な削減が期待できるとしている。(編集担当:吉田恒)