100年に1度の大変革期といわれている自動車業界。その中心となっているのが、何かと話題の自動運転技術と、車線逸脱防止支援や障害物検知、駐車支援などの「先進運転支援システム」(ADAS)だ。
矢野経済研究所の調べによると、ADAS/自動運転システムの2018年の世界搭載台数は、前年比24.3%増の2385万4000台。2030年には8249万9000台に達すると予測している。また、現況のADASは自動ブレーキや衝突警報など、自動運転レベル1が市場の90%近くを占めているが、2023年にはステアリングの操舵やアクセル操作まで自動化できるレベル2搭載車の台数がこれを上回るとみている。
この大きな変革の流れに乗るべく、各国の自動車メーカーも躍起になって自動運転車の開発に取り組んでいる。日本の自動車メーカー各社も例外ではない。中でもホンダ〈7267〉は今夏をめどに、ついに国産車初のレベル3(条件付き運転自動化)搭載車の発売を予定しており、日本国内はもちろん、海外からも注目を集めている。レベル3は半自動運転で、システムとドライバーがいつでも運転を交代できるという条件付きだが、それでもこれが成功すれば、将来の完全自動運転化に向けた大きな一歩となるのは間違いないだろう。しかし、もしも一度でも大きな事故を起こしてしまえば、少なくとも日本国内では、これだけ大きな自動運転化の波も止まってしまうかもしれない。完全自動運転化が実現できるかどうかは、細かな部品の一つ一つに至るまでの、安全面への配慮にかかっているのだ。
自動運転技術の要となるのは、車載カメラやセンサーだ。しかし安全面を考えた場合、カメラやセンサーがどれだけ正確で精密であっても、安心はできない。例えば、車線を逸脱した時や周囲に障害物を検知した時、車のシステムに何か異常が発生した場合など、それを警告するアラームが正常に鳴らなかったり、音が小さくて聞こえなかったりしたらどうだろう。システムを信頼しきっていたばかりに、大事故を起こしてしまうようなこともあるかもしれない。
実際、自動車の電装化が進むにつれ、警告音やエンジンスタート時のウェルカムサウンド、音声サポートなど、車室内で必要とされる音が多様化しているにもかかわらず、これらの音を何時いかなる時でも安定してドライバーに送り届けられるかといえば、実はそうではなかった。これらの音はマイコンから出力される音声信号をアンプで増幅し、スピーカーから発せられることが多いが、実は従来のスピーカーアンプ技術では、先述したように確実に音を出力するために設ける保護回路により、最大出力が制限されてしまうという課題があった。つまり、音声システムを安定させるためには大出力はあきらめざるを得なかったのだ。
ところが先日、日本の電子部品メーカーのローム〈6963〉が、この問題を解決するスピーカーアンプを開発した。同社が開発したAB 級モノラルスピーカアンプ「BD783xxEFJ-M 」は、同社独自の新方式の過電流保護回路を採用し、大出力時にも波形が歪まず、出力制限の上限を大幅に引き上げることに成功した。過電流からの保護と、大出力(4Ω負荷・歪率10%時、最大2.8W 出力)の両立を実現した。しかも、車載信頼性規格AEC-Q100 に準拠しており、最大動作温度105℃まで対応。さらには、パワーパッケージの採用により、大音量出力時の発熱を低減し、厳しい条件下でも機能を損なうことなく音声を出力することが可能だという。
自動運転やADAS技術が今後ますます進展し、完全自動運転化が実現するためには、カメラやセンサーの性能や精度だけでなく、こういった安全・安心面を強化する周辺の部品やシステムも同時に向上させていかなければいけない。細かな工夫や配慮は日本のものづくり企業の得意とするところ。大変革期の自動車業界で大きな存在感を示してくれることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)