一昨年から米中貿易摩擦の影響も有り世界経済が減速し国内の製造業も弱含みで推移してきた。昨年10月には消費税増税と台風被害、それに続く暖冬傾向によって消費の低迷も指摘されてきた。しかし、オリンピック開催に関連する再開発等が好調で大きな景気後退の恐れはないとも言われてきた。
しかし、自体は一変した。新型コロナウイルス対策の影響で国内の企業活動は全般的に停滞し既に消費への悪影響も観測されている。この状況はオリンピック中止・延期をも含む長期戦の様相を見せており先行き不透明感の増大がさらに経済活動を萎縮させている。連鎖倒産、生活破綻の発生は待ったなしの状況で政府の機動的かつ強力な経済政策の実施が期待される。
10日、内閣府は第2回経済財政諮問会議を開催し、11日にその議事録を公表している。日銀黒田総裁の発言によれば、IMFは2020年の世界経済の成長見通しを大きく下方修正する見込みだ。長期的には好調な設備投資や雇用環境等に支えられ緩やかな拡大基調にあるが、昨年10-12月期の成長率は大幅なマイナス、1-3月期についても新型コロナウイルスの影響で弱い状態が続くと見込まれ、先行き不透明感は増大している。
日銀は2日、談話において潤沢な資金供給に努めていく方針を示し、ETF買入れを1回1000億円に増額するなど金融調節面からの対応に努めている。
内閣府の説明によれば、GDPギャップの推計は8兆円のマイナスとなっておりデフレの状況だ。消費者マインドも新型コロナウイルスの影響が出始めている。大規模イベントの中止、外出自粛等の影響による消費行動や事業活動の停滞で景況は一段と下押しされる懸念が広まっており、景気ウォッチャー調査では現状、先行きとともに大幅な低下でリーマンショックや東日本大震災時と比べても強い先行き不安が広がっているようだ。
政府は同日「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第2弾」を決定し、経営者の今春賃上げ見通しが低下していることに着目し、先行き不透明な今こそ賃上げの継続が重要として、下請企業等において価格転嫁等により賃上げしやすい環境整備をはかり、雇用の維持を強力に支援していく構えだ。
現況での損害は業種・職種により大きなバラツキがある。マクロ政策のみでなくきめ細かで迅速な対応も期待される。(編集担当:久保田雄城)