自民党は4日、ミサイル防衛に関して政府に対し「憲法の範囲内で、国際法を順守しつつ、専守防衛の考え方の下、日米の基本的な役割分担を維持しつつ『相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力を保有すること』を含めて、抑止力を向上させる新たな取り組みが必要」との提言を行った。
自民党は「敵基地攻撃能力の保有」として提言をした場合には国民の理解を得られにくいとの判断から、この表現から譲歩した表現で「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力」とした。相手領域内とすることで敵国の領土・領海・領空を含め、発射後の敵国領域内の広範囲を包括することになる。
一方で『専守防衛』を国是とするこれまでの日本の立場を逸脱するものでないと主張できることが国民の理解を得る絶対条件だ。このため「敵基地攻撃能力を保有すべき」との表現は使わず、提言では「攻撃的な兵器を保有しない、とする政府方針は維持すべき」とも付け加えた。
安倍晋三総理は提言を受けて、記者団に「国の役割は国民の暮らしと安全を守り抜いていくこと」と述べ「政府においても国家安全保障会議で徹底的に議論を行っている。今回の提言を受け止め、しっかりと新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく考えだ」と述べた。
しかし、自民党の提言にもあるように(1)憲法の範囲内であること(2)専守防衛の考え方の下、日米の基本的役割分担(盾と矛)を維持することを、国会議論を通して、国民に説明し、(1)(2)について、担保されていることを説明することが必要だ。
社会民主党の吉田忠智幹事長は「平和主義や戦争放棄という憲法の理念に背き、戦後曲がりなりにも建前として堅持してきた『専守防衛』や『必要最小限度の実力』すら、かなぐり捨てる暴挙であり、決して看過できない」と政府の検討姿勢を強く非難し、検討を断念するよう求めた。
また、仮に見直しが行われれば「集団的自衛権行使の容認により加速した自衛隊と米軍の一体化をさらに進め、日米の役割分担を変質させることになる」と警鐘を鳴らした。吉田氏は「見直しは周辺国の緊張を不必要に高め、北東アジアの軍事緊張も激化させかねない。武力に武力で対抗するだけでは平和で安全な地域づくりには、つながらない。近隣諸国との有効な関係づくりにこそ努めるべきである」と訴えている。(編集担当:森高龍二)