物流や医療で普及が進むサーマルプリンタ。環境配慮型の素材にも高速印字が可能に

2020年08月09日 10:36

ローム_サーマルプリンタ

ロームが開発したデートコード用小型サーマルプリントヘッド「TH3001-2P1W00A」

 皆さんは普段、どれくらいの頻度で「印刷」を行っているだろうか。世間ではペーパレス化の動きが進んでおり、オフィスや家庭でも資源節約のために、紙ではなくデータでやり取りする機会も増えてきた。しかしその一方で、物流や品質管理の現場ではデートコード情報をラベルやチケット、レシートなどに「印字」する必要性も増している。

 これらのデートコード情報は、オフィスや家庭で使われているようなインクジェットプリンタやレーザープリンタではなく、サーマルプリンタが一般的に使用される。サーマルプリンタの一番の特徴はインクを使用しないことだ。発熱と放熱を繰り返して感熱紙などに印字を行うので、インクが飛び散ったりすることもなく清潔に使用でき、動作も静か。また、インクジェットやレーザーに比べて高速、長寿命という大きなメリットがあることから、近年では医療現場でも、患者のリストバンドや医療容器ラベルなどへの印字で普及が進んでいる。

 そんなサーマルプリンタの用途でも、とくに需要が伸びているのが食品包装のバーコードラベルだ。栄養成分表示の義務化や新食品表示制度の導入が進む中、サーマルプリンタの役割は日増しに大きくなっている。また、デートコード情報の増加に伴って印字量は高密度化傾向にあり、今よりもさらに高い解像度と印字品質、そして印字の速さもますます要求されるようになるだろう。

 ところが、サーマルプリンタは熱を利用するという構造上、にじみや擦れなどが起きやすい。とくに環境に配慮した素材を使ったフィルムなどへの印字や高速連続印字を行う場合、発色にじみが発生することがあるという。印字品質が低下して判読しにくくなったり、バーコードやQRコードが読み取れなくなったりしてしまえば、大きな問題にもなりかねないため、サーマルプリンタの印刷品質を左右するサーマルプリントヘッドの性能向上が急務となっていた。

 そんな中、ローム株式会社〈6963〉が、環境配慮型の包装材でも秒速1 メートルでの高画質印字が可能なサーマルプリントヘッドを開発した。今回発表された小型サーマルプリントヘッド「TH3001-2P1W00A」は、一般的なサーマルプリントヘッドの印字幅が業界標準で53.312mmであるのに対し、31.987mmと飛躍的な小型化に成功しているため、わずかなスペースにも印字可能であり、プリンタの小型・軽量化にも貢献する。加えて、秒速1メートル以上の超高速印字や、腐食に対して一般品比7 倍以上の耐性(長寿命化)も実現。小型化したことで、インクリボンの無駄をなくし、ランニングコストにおいても、最大半分まで削減することができるという。

 EC業界の活発化や社会のIoT化に伴い、デートコード情報の活用は、今後ますます拡がると思われる。今回紹介したような印刷技術が進化すれば、にじんだり擦れたりしたデートコードを見かけることもなくなるかもしれない。(編集担当:今井慎太郎)