新型コロナウイルスの感染が拡大している。東京では医療現場が既に逼迫状態だとされ、地域中核病院での院内感染が続発している。院内感染が医療のマンパワーを削ぎさらに医療現場を逼迫させるという悪循環が始まりかけているようだ。
都心では既に救急医療に支障が出始めていると言われている。新型コロナ感染の疑いのある救急患者が受け入れを拒否され、いわゆる「たらい回し」の状態になるケースも出てきている。新型コロナ患者のみでなく一般の救急患者に既に影響が出始めている。この背景には新型コロナ対応のための医療リソースの不足が指摘されている。
政府は既に人工呼吸器の増産をメーカーへ指示している。東京都は軽症患者を病院からホテルなどの病院外施設へ移すなどの措置を行い医療現場の負担を軽減しようとしている。しかし、医療従事者を感染から守るリソースは不十分な状況が続いているようだ。
こうした中で民間企業が保有する既存の技術を他用途に活用し医療リソースの拡充を支援しようとする動きが増えている。
16日には日産自動車が新型コロナ対策用の医療用フェイスシールドを製造し医療現場に提供することを発表した。テクニカルセンター、総合研究所、横浜工場など各事業所で保有する3Dプリンターを活用し月約2500個の医療用フェイスシールドの製造・提供を開始する予定だ。
日産は既に日本政府から人工呼吸器及び人工心肺装置メーカーへの支援要請を受けており、この検討も開始した模様だ。日産は国内のみでなく米国、英国でもフェイスシールドの生産・提供を行うとともに、スペインではサンパウ病院や他メーカーと共同し人工呼吸器の製造を開始する。
住友化学も16日、新型コロナ対策支援として医療用ガウン向けフィルムの提供を発表している。住友化学ではディスポーザブルの医療用ガウンが不足していることを受けて、グループ内で生産されるポリエチレンフィルムを緊急かつ優先的に本用途ガウン縫製企業へ提供することを決定した。
既に多くの企業が保有技術を転用し、これまで行っていなかったマスクの生産等に着手している。多くのIT企業が中小企業向けリモートワークシステムの無償配布などを行っている。企業が各自保有する技術・ノウハウが結集し、感染それ自体を抑止するとともに十分な医療リソースの提供で医療崩壊が回避されることを願う。(編集担当:久保田雄城)