ホームビルダーが提案する災害に強い社会。在宅避難をサポートする地域扶助システムの構築

2020年09月27日 08:30

画・「30年以内に震度7の地震が来る」半数。自宅の耐震性「わからない」3分の1。

気象庁の震源データの集計結果によると、日本国内で起こったマグニチュード3.0以上の地震は、年間平均でなんと4000回以上も記録しているという

 自然災害は、いつ、どこで発生するか分からない。気象庁の震源データの集計結果によると、日本国内で起こったマグニチュード3.0以上の地震は、年間平均でなんと4000回以上も記録しているという。また、地震だけでなく近年は台風や集中豪雨など、気候の変動による災害もあとをたたない。今年の夏、熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した集中豪雨「令和2年7月豪雨」も記憶に新しいところだ。

 しかも、最近の自然災害は「今までこんなことは無かった」といわれる地域でも多発している。地震の多い地域や台風が毎年のように上陸する地域、普段から雨の多い地域などでは経験や備えがあるかもしれないが、そうでない地域で発生した場合、被害がより大きくなってしまう可能性が高い。そうならないためには、日ごろから、あらゆる事態を想定して備えておく必要があるだろう。

 例えば、今後30年以内に80%近くの確率で予測されている南海トラフ巨大地震が発生すると、その被害は関東から沖縄、約2000キロメートルの範囲にも及び、約半数の国民が被災者になってしまうという。政府の中央防災会議が発表した資料によると、南海トラフ地震発生後は約2710万軒で停電が起こり、上水道は約3440万人が断水。下水道は約3210万人が利用できなくなり、都市ガスも約180万戸で供給がストップすると想定されている。もしも今、そのような状況に陥っってしまっても、あなたやあなたの家族は安心して避難生活を送れるだろうか。実際のところ、各家庭や各地域において具体的な対策が進んでいるとは言い難いのではないだろうか。

 地震に限らず、大きな災害に見舞われた場合、行政の助けばかりを期待していても心許ない。被害が甚大であればあるほど、救援も広範囲にわたる。当然、自分が住む地域が優先されるとは限らない。最悪の場合、ライフラインが分断されたまま、何日も孤立してしまう可能性だってあるのだ。そこで大切になってくるのが、地域の連携だ。

 とはいえ、希薄になりつつある現代の社会コミュニティの中で強固な地域の連携を実現するためにはどうすれば良いのだろうか。その、一つの理想的なモデルケースになりそうな取り組みを、そ木造住宅メーカーのアキュラホームが開始し、話題になっている。同社は、このコロナ禍においてもいち早く、モデルハウスにロボットを導入し、無人のリモート案内を取り入れるなど、フットワークの軽い企業というイメージがあるが、最新技術の活用だけでなく、約10年前からは、生活用水として利用できる井戸や井戸付き住宅の開発を進めていることでも知られている。

 2020年9月19日、アキュラホームは同社グループ及び全国ホームビルダー(ジャーブネット)の全200拠点を結ぶオンラインセミナーを開催。災害時における自宅での避難生活のサポートをテーマに、入居者や関係者などに向けて、被災経験者からの体験談や災害に強い住まいづくりについて伝えた。これだけなら、よくある防災セミナーなのだが、同社ではさらに今回、視聴参加者から、災害時の在宅避難をサポートする地域扶助の賛同者を募集しているのが興味深い。募集内容としては、まず、防災井戸に置き換えを掘り、平時は自宅で使用するが、災害時等には地域の生活用水として近隣に提供する賛同者300組を募っている。また、太陽光発電搭載住宅のオーナーに対しても、災害時の非常用電力の地域住民へのシェアなどについて賛同を呼びかけた。同社ではこれまでにも、災害が発生した際の停電や断水時には地域住民に対し、モデルハウスの電力や災害時備蓄品を提供する支援を行っているが、これを自社以外にまで拡大しようとする試みだ。

 同社によると、ホームビルダーの世界では元来、地域の家守りだけでなく、災害時はもちろん、日頃から地域全体の安全のため活動することが普通だったという。実際、大きな災害が発生した時には、単独世帯で被災生活を続けることは困難だ。周辺地域住民たちの協力や相互扶助が不可欠なのは間違いない。こうした活動が日本社会全体に広がって、地域の住民と企業が一体となって共に助け合う体制が築かれていければ、災害に強いまちづくり、災害に強い国づくりが実現できるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)