100年に一度の大変革期を迎えているといわれている自動車産業だが、2019年の販売台数の大幅な落ち込みに加え、新型コロナウイルス感染拡大という不測の事態も発生したことで不透明感が増している。これからの自動車産業は一体、どうなっていくのだろうか。
自動車、パワートレイン分野の市場予測サービス専門の調査会社 LMC Automotive が発表したライトビークル市場トレンドレポートによると、2020年8月の世界全体のライトビークルの販売は前年同月比で10.3%減となっている。しかし、同社では昨年8月の市場が好調であったことを勘案する必要があるとしており、総じて、今年8月の結果は底堅いものとみている。また、感染拡大のリスクは残っているものの、世界の多くの地域でロックダウン措置が緩和の方向に向かっていることや、
中国市場が前年同月比でプラスを維持していること、その他地域においても、年率換算販売が数ヵ月前よりも好調な数値を示しているとしている。
また、 2020年上半期の業績を発表したドイツの自動車メーカー大手3社の内容も、同様の傾向を示している。ドイツの大手3社は、他国の自動車メーカー同様、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年上半期の販売は大きく落ち込んだ。各社とも、前年同期比で2割から3割近く減少し、とくに欧州の落ち込みは厳しく、3割から4割近くに達したという。しかし、その一方で中国での落ち込みは比較的軽微に抑えられ、BMWは第1四半期こそ前年同期比30.9%減となったものの、 4月から回復を果たし、第2四半期は前年同期比で17.0%増となっている。ダイムラー社も2月以降に大きく回復し、メルセデス・ベンツとスマートにおいては、第2四半期の販売台数が 前年同期比16.6%増の過去最高となった。
乱高下しているとはいえ、自動車業界市場には明るい見通しはある。電気自動車や自動運転車などのポジティブな話題も豊富だ。中でも、完全自動運転への第一歩となる先進運転支援システム(ADAS)の導入は加速度を増している。
自動運転車や先進運転支援システムについては、快適さもさることながら、安全と安心が担保されることが最優先であることは言うまでもない。各国の自動車メーカーや電子部品メーカーがしのぎを削って開発を行っているが、日本のメーカーも活発な動きを見せている。
そんな日本メーカーの中でも、ADAS関連の車載部品に注力し、独自技術による新製品を次々と発表しているのがローム〈6963〉だ。同社は9月29日にも、高密度化が進む車載ECU やADAS 関連機器に最適で、車載向けとしては業界最小クラスとなる1mm四方の超小型 MOSFET を発表した。MOSFETは、電子回路の中でスイッチや信号を増幅することに使われる部品だが、車載部品に求められる温度検査や出荷検査をパスするためには、小型化することは非常に難しいという。肉を焼く時に大きなステーキより、サイコロステーキの方が早く焼けるのと同じで、小型化すると部品が発熱しやすくなるためだ。さらに、部品を小型化すると、基板に実装した時の接合部分も小さくなるため、うまく接合できなくなる可能性が上がり、回路に不具合が発生することに繋がる。同社の製品は、独自技術を用いて、小型化ながらも発熱と実装2つの課題をクリアしたという。
コロナ禍で先行きが不透明とはいえ、自動車産業は確実に次の時代に向かって進んでいる。ロームに限らず、日本の自動車メーカーや部品メーカーには、弛まない努力と技術力でこの難局を乗り切り、日本の自動車産業の未来を明るく照らしてほしいものだ。(編集担当:今井慎太郎)