100年に一度の大変革とも言われる自動運転車。既にその一部は実用化されているが、今年4月1日に施行された改正道路交通法によって高速道路など一部の公道でレベル3の自動運転車両が走行可能になった。自動運転技術はレベル0からレベル5まで6つのレベルに分けられるが、レベル3とは「一定の条件下でシステムによる自動運転が可能で、システムからの要請によりドライバーが直ちに運転操作に戻ることが必要」な自動運転技術のことだ。
また、自動運転化技術は車をハードウェアからソフトウェアに変えるとも言われる。自動運転を制御するシステムはITシステムだからだ。当然、車に搭載するソフトウェアの市場も拡大することになる。
先月29日に矢野経済研究所が「車載ソフトウェア市場に関する調査(2020年)」の結果を公表している。これによれば、国内の車載ソフトウェア市場規模は2019年まで拡大傾向であったものの、20年は新型コロナウイルス感染症の影響で新車販売台数が減少し、前年比92.2%の8298億円と縮小する見込みだ。しかし、今後はOEMの設備投資・研究開発投資が引き続き伸びていく見込みのため、25年には1兆1038億円、30年は1兆3140億円と拡大基調で推移するとレポートは予測している。
注目されるのは、今冬からトヨタがレクサスLSで高速レベル3自動運転用ソフトウェアのバージョンアップを有料のOTA(車載ソフトウェアの遠隔更新サービス)で実施することだ。20年9月時点ではテスラのように「OTAによる有料のECUプログラム更新ビジネス」を実施しているOEMはなく、他のOEMではリコール対応OTAだけだ。今後はトヨタだけでなく世界のOEMが有料OTA事業においてテスラに追随していくものと見込まれ、レポートではこれをもって「20年は日本OTA元年である」としている。
今後、OTAサービスでは、カーナビ用地図更新のような情報系ソフトウェアだけでなく、シャシー・ボディ系、パワトレ系、モーター電池制御系のソフトウェアなども遠隔更新されるようになり、30年頃にはOTAサービスが一般的に普及し、車両ソフトウェアが遠隔更新されるだけでなく、車両から収集されたデータがコネクテッドサービスや車両のデザイン工程にまで反映され、データの双方向化が進んでいくとレポートは見込んでいる。車載ソフトウェアへの需要が拡大基調となることは確実だ。(編集担当:久保田雄城)