日本の労働生産性は低いと言われている。OECDの2018年の統計では日本の就業者1人当たりの労働生産性は36カ国中21位で、G7(日米英独仏伊加)の中で最下位であり、他の先進主要国と比べ決して高いとは言えない。しかし、10年代に入り、世界経済の復調や設備投資循環、さらに人手不足も影響し日本の時間当たり名目労働生産性は上昇傾向で推移してきた。実質労働生産性上昇率も概ねプラス成長であったと言ってよい。
しかし、今年に入り新型コロナ感染症の影響により大きく落ち込みを見せている。内閣府が9月に公表した本年の4-6月期の実質GDP(2次速報値)は前期比で7.9%のマイナス、年率で28.1%の大幅なマイナスとなり、当然、付加価値を就業者数・労働時間で除した労働生産性は大きくマイナスになると予想される。
12日に日本生産性本部が「日本の労働生産性の動向2020」を公表しているが、これによれば20年4~6月期の「時間当たりの名目労働生産性」は前期比2.7%の大幅なマイナスになっている。ただし、これは新型コロナの影響による企業の営業自粛などによって労働時間短縮が進んだことが影響したもので実質経済成長率のマイナス幅より小さくなっている。
19年度の名目労働生産性は4927円で前年度水準を1.2%上回り過去最高となっている。物価上昇率を織り込んだ時間当たり実質労働生産性上昇率は前年度比1.2%プラスで、働き方改革による労働時間短縮などが寄与し、2018年度の0.4%マイナスから1.6%ポイント改善した。
19年度の「1人当たり名目労働生産性(就業者1人当たり付加価値額)」は821万円で前年度とほぼ同水準、実質ベースの「時間当たり労働生産性上昇率」は前年度比0.8%のマイナスで2年連続の前年度比マイナスとなったが18年度の1.5%マイナスから0.7%ポイント改善した。
産業別にみると、サービス産業、製造業ともに低下基調に転じており、20年に入ってからは落ち込みがさらに加速し、特に製造業の落ち込みが大きくなっている。小売業では落ち込みが小幅になっているものの、飲食店では足もとでさらに生産性が大幅に落ち込む状況に陥っている。小売・飲食では消費税増税後の19年後半から落ち込んでいるが、製造業は19年度初頭から低下傾向となっており、米中摩擦の影響も考えられる。賃金の下落も生じているが下落幅は生産性のそれより小さい。(編集担当:久保田雄城)