宮城、岩手を訪問した菅義偉総理は10日、東京電力福島第一原発事故により毎日増え続ける放射性物質に汚染された水の汚染処理水(トリチウムを含む水)処分に関して「極めて重要なことであり、いつまでも先送りすることはできないという考えは持っている」と語り、できるだけ早期に処理についての政府としての結論を出さなければならないとの認識を示した。
汚染処理水を巡っては東京電力が2022年夏ごろには貯蔵能力(137万トン)が満杯になるとし、多核種除去装置でも取り除けないトリチウムは国の排出基準の40分の1未満に薄めて海に放出するなど、海洋への放出案が最有力視されている。
これに対し、地元漁業団体はもちろん、全国漁業協同組合連合会も今年10月、政府に対し「我が国漁業者の総意として海洋放出には絶対反対だ」と慎重に検討するよう要請した。
国際NGOグリーンピースジャパンの鈴木かずえ氏はHPで海洋放出してはいけない理由として4点を指摘している。1点目は「18年8月、トリチウム水をどうするかの公聴会直前、トリチウム水に基準を超えるストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性核種が含まれていることが発覚した。東電はトリチウム水89万トンのうち約75万トンについて基準値を超えていたことを明らかにしている。東電は放出するときには基準値以内にしてからと言っているが、取り除くはずのものが取り除けていない。流すときには薄めればよいという問題ではない」と指摘。
2点目は「トリチウムは放つエネルギーは非常に低いものの、体内に存在する間に遺伝子を傷つけ続ける恐れがある。また体内で有機結合型トリチウムに変化すると体内にとどまる期間が長くなる」ため、内部被ばくのリスクがある。
3点目は「陸上でタンク保管する実行可能な最善の手段があるにも関わらず、海洋放出することは海洋環境保護の観点から認められない」。
4点目は「トリチウム分離はアメリカなどで行われているのに、汚染水処理についてトリチウム分離処理が選択肢に入っていない。時間をかけて検討するべき」としている提起している。海洋放出に関しては国連国際海事機関会合でも問題提起されており、慎重な判断が求められている。(編集担当:森高龍二)