持続可能な社会の実現に向けて。求められるモノづくり企業の技術力

2021年01月10日 08:10

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持続可能な開発目標・SDGs への取り組みが世界規模でより活発になっている

 持続可能な開発目標・SDGs への取り組みが世界規模でより活発になっており、多くの日本の企業も続々と賛同し始めている。とくに工場やプラントなど、大規模な産業設備の省エネ対策は、持続可能な社会の実現には避けては通れない世界共通の大きな課題だ。関連する企業に課せられる責任も大きく、FA機器やロボットなど、生産設備における一層の省エネ化が求められている。

 一方、近年のFA機器やロボットなどの産業機器、エアコンなどの民生機器は、より多くの機能や細かな制御が求められている。さらに自動化なども進んでいることから、安全かつ高耐久な信頼性も求められる。過酷な環境、条件下での使用も想定していかなければならない。

 省エネ、高機能化、信頼性といった多様な市場要望に応えるためには、最終製品の機器設計で捉えるのではなく、その内部を構成する半導体など、部品一個一個のレベルでの見直しが必要になってくる。

 電子機器の内部回路では、その動作のために電気のオンオフが頻繁に行われているが、この切り替えのたびに実は電力損失が起きている。使っているうちに電子機器が熱くなってしまう状態は、この電力損失に伴って起きるのだ。生活レベルであれば問題ない程度の損失でも、大電流を扱う産業機器や大規模な空調設備になると、馬鹿にならなくなってくる。また、大きな電圧を扱う負担も大きく、ともすれば効率が著しく低下したり焼損したりする危険もあるので、大きな事故にもつながりかねない。これら電気回路の損失低減で大きな役割を果たすのがパワー半導体と呼ばれる電子部品だ。

 近年では、劇的な損失低減を実現するSiC(シリコンカーバイド)を使用したパワー半導体が注目されているが、既存のSi(シリコン)材料のパワー半導体も着実に進化を遂げている。

 例えば、SiCパワー半導体のリーディングカンパニーとして知られるロームも、SiCだけでなく、Siのパワーデバイスのラインアップ強化も同時に進めている。12月17日には、産業機器や大型民生機器向けに最適なパワー半導体「24V 入力対応の-40Vと-60V 耐圧Pch MOSFET」計24 製品をラインアップに加えた。新製品は、一般的に使用されるNch MOSFETよりも効率は落ちるが、回路構成が簡単というメリットがある。しかも、Pchとしては通電時の電力損失の少なさで業界トップクラスだという。さらに、同社がこれまで蓄積してきたノウハウを活かし、品質向上を実現。一般的に背反するといわれる信頼性向上と電力損失低減を両立しており、高品質が求められる産業機器等の長期安定動作に貢献するという。単に損失低減を目指すだけでなく、ユーザーのニーズにきめ細かく対応する姿勢は日本企業ならではと言える。

 工場やプラントに勤めていても、よほどの技術者や専門家でもない限り、パワー半導体の損失など気にすることは、ほとんどないだろう。しかし、各部品メーカー等の努力により、そういった微細な部品の一つ一つのレベルが飛躍的に向上することで、より便利に、そして持続可能な社会の実現を可能にするのだ。(編集担当:藤原伊織)