政府の「住生活基本計画(全国計画)」は10年単位でまとめられ5年ごとに見直されるが、2016年に16から25年度の10年間を計画期間とする住生活基本計画が策定されている。この計画は8つの目標と成果指標から成り立っているが、目標2として「高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現」が掲げられており、「安全に安心して生涯を送ることができるための住宅の改善・供給」と「希望する地域で住宅を確保し、日常生活圏において、介護・医療サービスや生活支援サービスが利用できる居住環境を実現」が目標とされ、その成果指標の一つとして「高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合」が25年までに4%とされている。
こうした政府の高齢者向け住宅政策を背景に、有料老人ホーム、軽費老人ホーム、シルバーハウジング、サービス付き高齢者向け住宅などの高齢者住宅市場は好調のようだ。
2月5日、矢野経済研究所が「高齢者住宅市場に関する調査」の集計レポートを公表している。これによれば、20年の高齢者住宅の市場規模は供給戸数ベースで前年比6.9%増の97.0万戸と推計されている。19年は前年比4.5%増の90.7万戸であったので25年目標4%に向けて各事業者が供給を進めペースアップしている模様だ。
基本計画の目標にあるように、高齢者住宅には老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など様々な類型があるが、事業関連者以外の一般の者が、各類型の詳細を認識するのは難しい。サービス付き住宅の入居の対象となるのは要介護期の高齢者であるが、こうした高齢者は、一人一人に適した住まいやその環境、立地や金銭的負担の許容度合いなど、その個別事情は多様だ。その為、このような諸事情を十分配慮しながら、有益な高齢者住宅の情報を利用者本人や家族に提供するサービスが必要となる。
このサービスを担うのが高齢者住宅紹介事業者である。紹介事業者は、高齢者住宅それぞれの特徴やサービス品質の違いなど、利用者が事前に知ることが出来ないような詳細な情報を提供することができることから、紹介事業者の価値は高まっている。基本計画の目標を実現するためにも、高齢者住宅紹介事業者の認知度を高め、その役割が十分発揮されることが期待される。(編集担当:久保田雄城)