五輪組織委のメッセージ、象徴できる会長を望む

2021年02月14日 08:31

画・オリンピック、「予定通り開催」が3割、大会成功への備えは「コロナ対策」7割超。

組織委は今回の問題で「改めてビジョンを再確認し、引き続き、人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを尊重し、讃え、受け入れる大会を運営する」と発信した

 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などとオリンピック憲章に反するとともにIOC公約とも矛盾する女性蔑視発言で国内外から批判を浴びた東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長。12日の組織委理事・評議員懇談会で辞任を表明した。これを受け、組織委は会長選考のための委員会を設置し、透明性の高い会長選任を行うとした。

 森氏の対応は女性蔑視発言問題にとどまらず、組織を理解していないとしか思えない後任「会長」への就任要請行為もあった。

 組織委定款(23条2項、24条2項)は「会長は理事から選出し、理事会の決議によって選定する」としている。ところが森氏は11日、後任に元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏に就任を要請、川淵氏も受諾せざるを得ないような状況にあることをマスコミ取材で語っているところが報じられた。

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は「森氏の個人商店ではない!』。当然、野党はじめ政府内から問題視された。引責辞任する森氏が後任を決めれば、影響力はそのまま残る。さらに川淵氏は森氏を「相談役」に据える考えだった。オリンピック憲章に反する発言で辞任する人を相談役に据えることは許容されないだろう。

 小池百合子東京都知事は12日の記者会見で、後任選びは「透明性をもって手続きを進めていただきたい」と釘を刺した。日本共産党の志位和夫委員長は「女性蔑視発言で辞任する会長が密室で後任を指名し、組織委員会はそれを追認するだけとなれば、いったい何が変わるのか」と強い懸念を示し「組織委員会は公の場で真正面から議論し、自らの反省を明らかにしたうえで、今後の方策を決めていくべき」と同日SNSで発信した。

 森氏の後任要請行為は理事を蔑ろにする行為とも受け取れる不適切なもので、こうしたことが平然と行われる体質が組織委のこれまでの運営でつくられてしまっているのではないかと推察される。組織体質そのものの改善が求められる。

 組織委員会は12日、後任会長選任のための選考委員会を設置し、委員会の人数規模は一桁に。委員の男女比率はほぼ半々にするとした。委員長には経団連名誉会長で組織委名誉会長の御手洗冨士夫氏が就任した。選考委員会で候補者を決定したのち、理事会で正式に新会長が決定する運びになる。

 組織委は今回の問題で「改めてビジョンを再確認し、引き続き、人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを尊重し、讃え、受け入れる大会を運営する」と発信した。そのメッセージを象徴する、できる人物を会長に据えていただきたい。

 また理事・評議員は自らの重責を再認識し、本来果たすべき役割を粛々と果たしていただきたい。そのことを願う。(編集担当:森高龍二)