新型コロナウイルス感染症の影響で経済は先行き不透明な状況が続いている。コロナ以前より日本経済は後退局面に入っていた上に、オリンピックの延期をはじめコロナの影響で需要が喪失する深刻な状態に陥っている。当初は企業の先行き見通しも厳しいものが主流であった。しかし、ワクチン接種の開始やウイズコロナに適用する様々な試みの中で企業の先行き不透明感も緩和され、業績を上方修正する上場企業が急増している。
帝国データバンクが「上場企業の業績修正動向調査(2021年3月期決算)」の結果を3月5日に発表している。これによれば、2月末現在で業績修正を発表した上場企業は802社で、この内604社が上方修正、198社が下方修正となっており、業績修正を発表した802社の8割近い75.3%が上方修正となっている。ここで「上方修正」とは20年3月期の決算短信に記載された21年3月期の年売上高予想と比較して、その後発表された資料の年売上高が増加した場合を言い、逆に減少した場合を「下方修正」としている。
業績修正した上場企業802社の中に業績修正を複数回行った企業は183社存在する。このため802社が発表した業績修正は合計978回となるが、月別に見ると21年2月に394回と急増し最多となっている。2月の内訳は上方修正が313件、下方修正が81件で上方修正が79.4%と約8割を占めている。
市場別では、「東証1部」が525社で全体の65.5%を占め最も多く、次いで「ジャスダック」の119社、構成比14.8%、「東証2部」が98社、同12.2%、「東証マザーズ」37社、同4.6%の順となっている。業種別では、「製造業」が389社で全体の48.5%と半数近くを占め最多となっており、次いで「卸売業」91社、「サービス業」81社と続いている。上方修正した企業の割合は「製造業」で79.9%と最も高く、次いで「サービス業」74.1%、「卸売業」73.6%の順だ。 年売上高の修正の程度を見ると「5%未満の増加」が上方修正企業の41.0%、「5%~10%未満の増加」が 20.9%で、10%未満までで62%となっている。
レポートは「2月に国内でのワクチン接種が開始されたことは2月の上方修正発表が月別で最多(313回)になったことに少なからず影響し、さらに313回となったことは株価3万円突破の一要因になった」と分析している。(編集担当:久保田雄城)