日本経済は2018年後半から景気後退局面にある。しかし、19年の求人倍率は1.6倍を超えるなど人手不足の深刻化は払拭されないままであった。翌年20年には新型コロナの流行の影響で1.1倍までに急下降するが1倍を下回ることはなく、ミスマッチがあるというものの業種、職種によっては人手不足の状態が続いている。しかし、コロナ禍の先行き不透明の中、大・中小企業ともに正社員・非正社員の採用について慎重な態度を強めているようだ。
帝国データバンクが2月に「21年度の雇用動向に関する企業の意識」について調査し、その結果レポートを3月15日に公表している。これによれば、21年度に正社員の採用予定がある企業は55.3%、前年2月調査から3.9ポイント減少、3年連続の減少となり、12年度以来9年ぶりの低水準だ。規模別では、大企業は79.5%で8年ぶりに8割を下回り、中小企業は50.2%となり、両者ともに前年調査から3.4ポイントの減少で規模を問わず慎重な姿勢を強めている。
非正社員で採用予定がある企業は36.8%で前年調査から7.4ポイントの大幅な減少となり、9年ぶりに3割台まで減少している。業種別では、従来人手不足が深刻だった飲食店が73.1%でトップ。次いで、スーパーマーケットなどを含む各種商品小売が69.6%で続いた。雇用喪失の著しい飲食店でも業態により未だ人手不足感は払拭されていないようだ。
自由回答を見ると、「新型コロナの影響による業績見通しも不透明であることから、採用も様子を見ている」(金属加工機械卸売)といった意見が多く見られ、潜在的に人手不足感は高いようであるが、先行き不透明のため採用に慎重になっている様子がうかがえる。
本年4月より新たに努力義務となる「70歳までの就業機会確保」への対応について複数回答で聞いた結果では、「70歳までの継続雇用制度の導入」が25.4%で対応に前向きなものの中ではトップとなったが、一方「現段階で対応は考えていない」が32.4%も存在する。自由回答を見ると「技術の伝承という観点から継続雇用をしている」(ニット・レース染色整理)と積極的な意見も見られる一方、「高齢者にとって体力的に厳しい業種なので希望が少ない」(各種食料品小売)などとなっており、業種・職種によって体力面などさまざまな課題があるようだ。
コロナ禍の先行き不透明感の中、しばらくは雇用の足踏み状態が続きそうだ。(編集担当:久保田雄城)