DX、AIの時代、企業の各業務は高度の専門性を求められる。これまでの日本的労務管理で行われてきた順番人事では高い専門性をともなった人事配置は難しく、企業価値を高めることが不可能な時代となっている。以前より日本の労働市場の流動化の遅れについて指摘され、日本的人事・労務管理の見直しについて議論されてきたが、コロナ禍でのテレワークの普及を背景に人事評価・労務管理見直しの動きが加速しているようだ。昨年には経団連から「ジョブ型へのシフト」という提言も出され、にわかに「ジョブ型雇用」に対する注目が高まっている。
ワークスHI(Works Human Intelligence)が1月から2月にかけて自社のシステムユーザー企業119社を対象に「ジョブ型雇用に関するアンケート調査」を実施、3月17日にその集計結果を公表している。この調査では、従来日本で採用されてきた人事制度である「職能資格制度」に代わり、「職務や職責を定義して基準を設ける制度」を「ジョブ型」と定義し、詳細に職務内容や要件を定義する「職務記述書(ジョブディスクリプション)」や厳密な定義はしないが役割を言語化して定義する「役割等級制度」の導入状況を調査することで、大手企業における「職務や職責の言語化・明確化」の浸透度合いを評価している。
集計結果によれば、詳細な定義をする「職務記述書」を既に導入している企業は12.6%にとどまった。「役割等級制度」を既に導入している法人は44.5%で、導入理由は「専門性の高い能力を評価するため」など評価に関するものと「脱年功序列のために職能資格制度から変更した」などが多くなっている。
上記の結果を総合すると、「職務記述書」または「役割等級制度」を既に導入している企業は47.9%、導入・検討予定の企業が28.6%で、両者を合わせると76.5%となり、8割近くが「ジョブ型」の人事評価には積極的なようだ。しかし、「ジョブ型雇用」に関しては慎重な意見が多く見られ「欧米型のジョブ型雇用はマッチしない部分もある」、「新卒一括採用の状況ではマッチしないように思える」、「長年をかけて培われた日本人の気質上、一律でジョブ型雇用を行う状況にはまだ至っていない」などとなっている。レポートでも、日本で検討されている「『ジョブ型』は、本来のジョブ型雇用とは異なる」と指摘されている。日本独自の「ジョブ型雇用」モデル構築が課題のようだ。(編集担当:久保田雄城)