新型コロナの経済への悪影響は当初予想されていたものよりは小さかったようだ。中国経済の早期回復とこれに誘発されたアジア経済の持ち直しで日本も製造業を中心に回復基調で推移している。しかし、自粛ムードの中、個人向けサービス業では顧客離れによる深刻な状態が続いている。飲食店や宿泊業、旅客運輸業などコロナの影響を直接受けた業種では給付金やGoTo事業など各種支援が講じられている。しかし、業種によっては時短要請などの活動制限は受けていないものの、コロナの影響で顧客離れが深刻な業種も存在する。その一つが「理容・美容店」だ。
4月15日、矢野経済研究所が「理美容市場に関する調査」の結果レポートを公表している。これによれば、2020年度の理美容市場の規模は売上高ベースで前年度比92.7%の1兆9700億円と大きく減少した。
20年は新型コロナの感染拡大で4月に緊急事態宣言が発出され、これにより経済全般の停滞が起こった。5月の解除後は政府による各種支援策もあり一部回復の兆しは見られたものの感染の再拡大もあり先行き不透明な状況が未だ続いている。こうした中、理美容業界においても感染拡大への不安を背景に、消費者の巣ごもりや節約意識が高まり、顧客のセルフカラーや来店間隔の長期化が進むなど、依然として厳しい状況が続いているようだ。
理美容業界は、以前から厳しい法律に則りサロンの衛生管理を行っているが、新型コロナ感染拡大を受け、環境衛生業としての社会的責任を果たすとともに、消費者や従業員の健康を守るため、感染防止強化に向けた様々な取り組みを行っている。具体的には、「店舗」「従業員」「顧客」の3点からなるが、「店舗」に関しては、手洗い・消毒、マスク着用、店内換気、店内消毒、施術道具の消毒、カーテン・シートの設置、個室設置、空気清浄機・除菌器等の導入など、「従業員」に関しては、出勤時の検温、手洗い・うがいの徹底、マスク常時着用、持ち物などの消毒、ゴム手袋やグローブの着用などを、「顧客」に関しては、来店時の検温、消毒液の用意、事前予約の徹底による来店人数管理、事前予約者のみへの施術など、様々な感染予防策に取り組んでいる。
こうした業界をあげた取り組みからレポートは、21年度の理美容市場は、Withコロナ時代に適応した経営が定着すると見込み、売上高は前年度比106.9%の2兆1052億円(理容が6232億円、美容が1兆4820億円)とプラスに回復すると予測している。(編集担当:久保田雄城)